2023 Fiscal Year Annual Research Report
日常生活におけるアルツハイマー病治療のための頭部搭載型無知覚光刺激デバイスの開発
Project/Area Number |
22K19796
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
清川 清 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (60358869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 壮 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座准教授 (00530198)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 光刺激治療法 / 無知覚フリッカ / ウェアラブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,アルツハイマー病 (AD) の治療法として注目されている光刺激治療法の治療継続性を向上させるため,低ストレス光刺激を提示する頭部装着型デバイスを開発した。従来の薬物治療は副作用や経済的負担が問題である。光刺激治療法は,軽度および前駆期のAD患者を対象に40Hzで点滅する光刺激を提示することで,脳波中のガンマ周波数帯を刺激し,認知機能改善や症状の抑制を行うものである。しかし,治療の継続性が課題であり,そのための効果的なデバイスが求められている。
治療継続性を高めるために,「光刺激が低ストレスであること」,「移動可能であること」,「視野が確保できること」の3点を満たすデバイスを開発した。低ストレスな光刺激はInvisible Spectral Flicker (ISF) によって実現した。ISFは,見かけ上は定常光であるが,40Hzでスペクトルが変化する光刺激である。評価実験として,快適性評価実験と脳波解析実験を実施した。快適性評価実験では,点滅光とISF刺激の2種類の光刺激条件で映像視聴タスクとリーディングタスクを実施し,NASA-TLXによるワークロード評価や独自の快適性評価アンケートを用いて評価を行った。実験の結果,ISF刺激は点滅光刺激よりも有意にワークロードが低く,快適であることが示された。また,最大利用可能予想時間もISF刺激の方が有意に長かった。
脳波解析実験では,周辺視野に対してISF刺激と定常光刺激を提示し,その間の脳波を測定した。評価指標として40Hzにおける脳波のSNR (Signal to Noise Ratio) を用い,暗室と明室の両条件下で評価を行った。その結果,ISF刺激提示時の40HzにおけるSNRは定常光刺激時と比較して有意に高く,提案デバイスが治療に効果的であることが確認された。以上の結果から,提案デバイスは従来の光刺激デバイスよりも治療継続性が高く,AD治療の有効な方法として今後さらに研究を進める価値があると考えられる。
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