2022 Fiscal Year Research-status Report
海の暗い所で珪藻が栄養塩を消費する事実-生存戦略の仮説を提唱-
Project/Area Number |
22K19838
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大木 淳之 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (70450252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野坂 裕一 東海大学, 生物学部, 講師 (40803408)
亀山 宗彦 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (70510543)
野村 大樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (70550739)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 基礎生産 / 植物プランクトン / ブルーム / 栄養塩 / 暗所 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道噴火湾で珪藻が大増殖する春先に、有光層の直下(無光層)にて、海水中の栄養塩が減る現象が捉えられた。北海道噴火湾の珪藻ブルーム時に採取した海水に栄養塩を添加したところ、暗所でも栄養塩が急速に消費されることがわかった。有光層で栄養不足に陥った珪藻が無光層に沈降して、無光層に豊富にある栄養塩を吸収することが考えられた。珪藻ブルームで見られるタラシオシラ・ノルデンスキオルディの無菌培養株を培地で増殖させ、培地中の栄養塩が枯渇したのを確認してから、栄養塩(硝酸イオン、リン酸イオン、ケイ酸)を添加、暗所に移す暗所培養実験を行った。すると、暗所に置いてから3日ほどで、硝酸イオン、リン酸イオン、ケイ酸が枯渇した。暗所にて、珪藻が栄養塩を吸収することが確認された。同様の実験にて、過剰量の栄養塩を添加したところ、硝酸イオンとリン酸イオンの暗所での取り込みは数日で終わった。しかし、ケイ酸については暗所での培養期間中(11日間)、取り込みが続いた。暗所で栄養塩を吸収させた後、再び明所に置いて増殖する能力があるかを確かめた。11日間暗所に置いた後では、増殖を確認することができなかった。暗所に置いた時点で、栄養塩枯渇のため死滅しつつあった可能性、暗所で吸収した栄養塩では再増殖に使えない可能性が考えられた。珪藻が浮力を保つ方法として、透明細胞外重合粒子(TEP)を放出することを想定している。自然海水中および培養海水中のTEP濃度を測定する手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
珪藻の培養実験とTEP計測が順調に進んでおり、暗所での栄養塩吸収の様子が捉えられているため。
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Strategy for Future Research Activity |
珪藻のタラシオシラ・ノルデンスキオルディの暗所培養実験を継続する。初期培養(明所)で栄養塩が枯渇した直後(増殖能力が保たれている状態)に、栄養塩を再添加して暗所に移し、栄養塩を吸収させる。そして、暗所で栄養塩を吸収しつくした直後に、再度明所に置く実験を行う。これらのタイミングを計るため、リン酸塩の比色分析、細胞密度の計数を数日毎に行う。栄養塩が欠乏した珪藻細胞が、暗所にてどれだけ栄養塩を貯め込むことができるのか、その最大量を調べる実験も行う。培養実験前後のTEPを計測するとともに、DMSPの計測を行う。DMSP計測については、手法の確立から取り組む。海洋観測にて、植物プランクトンの春の大増殖(ブルーム)時の珪藻を採取して、自然状態で栄養が欠乏した珪藻細胞を使って同様の実験を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で、観測航海と出張分析に参加できない学生が複数名出て、旅費を使わなかったこと、その分の航海と出張分析をR5年度に実施する必要があるため次年度使用額が生じた。
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