2023 Fiscal Year Annual Research Report
降水量を高時間分解能で復元するための、樹木髄の酸素・水素同位体比モデルの構築
Project/Area Number |
22K19854
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
香川 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 多余子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353670)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 髄 / 酸素同位体比 / 水素同位体比 / 炭素同位体比 / 古気候復元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スギ苗木およびスギ以外の樹種の苗木の天然の髄の酸素・水素同位体比と降水量等の観測データから、髄の同位体比を説明するモデルを構築し、どの程度の精度で降水量を復元することができるかを検証する。また、豪雨をもたらした台風の履歴が髄の同位体比の変動として記録されているかを検証することが目標であるが、頂端から7cm程度の伸張中のシュートでは、酸素同位体比が急激に下がる、降水量と対応している可能性のあるピークが見られたものの、それより下の部分ではそのようなピークが見られず、降水量との明瞭な対応関係は見られなかった。このような予想外の結果が得られたため、降水量と髄の酸素同位体比を関連付けるモデルを構築することは困難であった。一方で、髄の炭素同位体比には日周期を反映すると思われる周期的な変動が見られた。スギを含むC3植物の炭素同位体比は光合成時の水利用効率を反映しており、晴れている日の昼間に形成される髄は、光合成生産された直後の光合成産物を用いて形成されることが期待される一方、夜間はでんぷんなどの貯蔵物質を使って髄の細胞が形成されるため、昼間に形成された髄とは異なる炭素同位体比を持った髄が形成される可能性がある。このため、昼と夜の日周期が反映された炭素同位体比の変動が観測されたと我々は考察している。今後の課題としては、スギ個体数を増やして炭素同位体比の変動が個体間で同調するかどうかを確認する必要があり、もし同調性が観測された場合は、年輪年代学で行うクロスデーティングのように、日照量などのデータから髄の形成時期を日単位で決定できる可能性がある。
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