2023 Fiscal Year Research-status Report
熱帯の陸域生態系におけるマイクロプラスチック汚染の実態把握
Project/Area Number |
22K19877
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 一希 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (90533480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半谷 吾郎 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (40444492)
鎌田 昂 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (40815859)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / 陸生哺乳類 / 東南アジア / ボルネオ |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア・ボルネオ島は、動植物の世界的な生物多様性ホットスポットである。河畔林に生息する動物は、川の水を飲む際にマイクロプラスチック(MPs)を体内に摂取する可能性が高く、コウモリや鳥類なども、餌となる飛翔昆虫からMPsを摂取する可能性は高い。本研究では、MPsの影響評価を陸域に広げ、熱帯雨林という複雑な食物連鎖網での動物への汚染状況を把握することが目的である。調査地は、マレーシア・サバ州のキナバタンガン下流域である。今年度は、MPsの汚染を受けやすいと考えられる、河畔林を頻繁に利用する動物種の糞を採取した。特に、地上性の強い種(ブタオザル)と、樹上性の強い種(テングザル)の糞を用いて、集中的にMPsを糞から抽出するためのプロトコルの開発を行った。先ずは、MPs 分析の前処理方法として一般的である、過酸化水素水に硫酸鉄(Ⅱ)を混合したフェントン試薬により糞中有機物を分解する手法を試みた。これら前処理したサンプルを液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)および、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)等で分析し、MPsの検出の可能性を探索した。LC/MS分析の結果からは、地上性の強いブタオザルの方が樹上性の強いテングザルと比較して、より多くの化合物が検出された。生息場所の差(地上/樹上)や、消化機構(後腸発酵/前胃発酵)の差に着目してこの違いを考察する必要があるだろう。一方で、FI-IR分析では、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は検出できなかった。今後は、ポリエチレン(PE)やポリスチレン(PS)等のMPs関連物質の検出を試みる予定である。MPs分析用の糞サンプルを採集する際に、調査地域の動物種の行動観察や、生息数確認も実施しており、それらの分析も同時に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地(マレーシア)における分析機器の使用等に手間取り、予定していた量の分析を十分に行うことができなかったため、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による分析で、ポリエチレン(PE)やポリスチレン(PS)等のポリメタクリル酸メチル(PMMA)以外のものもターゲットにして分析を進めていく予定である。また、分析する糞の動物種も増やしていくことを検討している。
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Causes of Carryover |
現地の分析機器の使用に際し手間取り、予定していた分量のサンプル分析が実施できなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。次年度はスムーズに分析できる目処が立っており、昨年度に実施できなかったサンプルも含めた量の分析をする予定である。差額の予算はそこで使用できると考えている。
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Research Products
(3 results)