2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of motility control of innate immune cells by utilizing their oxygen response characteristics
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22K19887
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
船本 健一 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (70451630)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 生物・生体工学 / 自然免疫細胞 / 酸素応答 / 低酸素 / 好中球 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞周囲の酸素濃度・力学的刺激・化学的刺激を制御できるマイクロ流体デバイスを用い、酸素濃度に応じた自然免疫細胞の形態と動態を観察する実験に取り組んだ。本デバイスは、3本の分離したメディア流路の直上に2本のガス流路を設置した2層構造を有し、ガス流路に酸素濃度を調整した混合ガスを供給することで、メディア流路内に任意の酸素濃度の一様な状態や酸素濃度勾配を10分以内に生成できる。細胞実験には、白血球のモデル細胞としてヒト全骨髄球性白血病細胞株(HL-60)を用いた。RPMI-1640培養液に熱非働化済ウシ胎仔血清とペニシリン・ストレプトマイシン(P/S)を添加した培養液を用い、HL-60細胞をディッシュ上で培養した。その後、P/Sを添加していない上述の培養液にall-trans-レチノイン酸(ATRA)を分化誘導試薬として添加し、さらに培養を継続することでHL-60細胞を好中球様に分化させた。P/Sの有無やATRAの濃度、培養日数については予備的検討を行い、1μMのATRAを添加して5日間培養することにした。好中球様に分化したHL-60細胞を回収して各メディア流路に注入して接着させ、そのデバイスを顕微鏡上のステージインキュベーター内に設置した。酸素濃度0%と21%の混合ガスを、左右のガス流路に供給することでメディア流路に沿う方向に酸素濃度勾配を生成したり、両方のガス流路に供給することで一様な酸素濃度の状態を生成したりして、細胞のタイムラプス観察を行った。その結果、細胞が遊走する様子が観察され、実験開始から1時間後に細胞の遊走が活発化した。酸素濃度勾配下の遊走は、高酸素側と低酸素側で顕著な差異はなく、酸素濃度勾配に沿った遊走の方向性(走気性)も見られなかった。一方、酸素濃度が極めて低い環境では、遊走速度が減少する様子が観察され、酸素濃度によって動態が変化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白血球のモデルとしてHL-60細胞を好中球様に分化させた後、マイクロ流体デバイス内に播種し、酸素濃度の制御下でその細胞運動をタイムラプス観察することができた。酸素濃度勾配下や酸素濃度レベルの異なる一様な酸素状態で遊走速度を計測し、酸素濃度に応じた変化を観察できる技術とノウハウを蓄積した。また、マウスから採取したマクロファージの実験についても検討を開始しており、研究自体は計画に沿って進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、マイクロ流体デバイスを用い、酸素濃度の時空間変化に対する自然免疫細胞の形態および動態の変化、タンパク質の発現・局在・活性および分泌物の解析に取り組む。これまでに、ATRAを添加して培養することでHL-60細胞を好中球様の細胞に分化させて実験を行ってきたが、分化に用いる試薬によって化学的な刺激に対する走性(走化性)は異なるとの報告がある。そこで、ATRAの代わりに用いられるDMSOを用いた分化も行い、分化試薬による違いについて調べる。また、ホルボールエステル(PMA)でHL-60細胞をマクロファージ様に分化させた場合についても実験を行う。マイクロ流体デバイスを用いた実験では、様々な酸素濃度レベルの一様な状態や、緩急の異なる酸素濃度勾配、一定時間毎に酸素濃度を変化させたり勾配の向きを逆転させたりしながらタイムラプス観察を行う。取得した時系列の顕微鏡画像を解析して各細胞を追跡し、遊走の距離、方向、持続性を計測する。ここで、酸素濃度に応じて燐光強度が変化するプラチナ化合物を混合したPDMSの薄膜を作製してデバイス底面に貼り付け、実験中の酸素濃度の計測についても検討する。酸素濃度の変化に加え、細胞培養液の流量と成分を調整することで、自然免疫細胞に流れ負荷や炎症性の応答を促した場合についても実験を行う。低酸素誘導因子HIF-1αや細胞膜機能分子の発現の免疫蛍光染色による観察や、細胞培養液を回収して炎症性サイトカインの分泌量の経時的な解析も実施する。これらにより、自然免疫細胞の種類による酸素濃度感知と運動の変化のメカニズムの類似性と特異性を解明する。さらに、自然免疫細胞の運動を記述する数理モデルの構築にも取り組む。Cellular Potts Modelなどのモデルに、細胞実験結果に基づいて酸素濃度に応じて変化させる係数を付与し、実験結果を再現する検討から開始する。
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Research Products
(2 results)