2022 Fiscal Year Research-status Report
ドキュメンタリー写真概念の再検討ー反省的作品と集団的写真実践の分析を通じて
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22K19970
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
田尻 歩 東京理科大学, 教養教育研究院葛飾キャンパス教養部, 講師 (60966191)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ドキュメンタリー写真 / リアリズム / 集団制作 / 全日本学生写真連盟 / プロレタリア写真 / プロレタリア文化運動 / 学生運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまで大きく取り上げられてこなかった反省的・集団的ドキュメンタリー写真実践の系譜を分析し、既存のドキュメンタリー概念を見直し拡張することにある。 2022年度は、日本の集団的ドキュメンタリー実践についての研究を進め、主に以下の二つの点で成果が得られた。 1)プロレタリア写真運動についての研究を「「下からの」集団的ドキュメンタリーの前史ープロレタリア写真運動と伊奈信男の初期写真批評」(『東京理科大学教養教育研究院紀要』第1号)として発表した。「プロレタリア写真運動」は、1920年代後半からドイツとソ連で開始した労働者写真運動の日本での呼び名だが、資料の少なさや活動そのものが小規模だったこともありこれまで全体像が描かれてこなかった。この論文では一次資料を用いつつドイツの同運動と比較して、日本での活動の概要や運動の盛衰のプロセスを明らかにした。 2)学生写真家組織・全日本学生写真連盟の活動についての論文を投稿した(「新たなリアリズム写真運動としての全日本学生写真連盟―「集撮」の思想と『この地上にわれわれの国はない』」『JunCture』第14号)。この文章では、近年公開された全日本学生写真連盟の会報などの資料を参照し、1960年代後半から70年代はじめにかけての活動を前世代のリアリズム写真運動からの系譜に位置付け、「集団撮影行動」という特異な思想と実践を分析した。それにより、60年代後半から団体の理論的支柱となる福島辰夫の考えとそれに影響された会報における議論を整理し、写真集の精読を提示することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、プロレタリア写真運動と全日本学生写真連盟の活動を分析し、集団的ドキュメンタリー写真の二つの様態を明らかにする論文を発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、現在着手しているイギリス1970年代の「コミュニティ写真」という集団的ドキュメンタリーについての研究を進め、その成果公表を目指す。また、本年度は最終年度となるため、すでに考察を終えている反省的ドキュメンタリーについての研究と合わせて全体をまとめ、こちらも成果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
閲覧・購入予定だった図書・資料の一部がオンライン上で公開され、当初必要と考えていた費用(移動代、コピー代、購入資金等)に余剰が生じたため。
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