2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Whitehead's "Speculative Philosophy" : In Relation to 19th and 20th Centuries Philosophy of Science
Project/Area Number |
22K19977
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
有村 直輝 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (50967114)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ホワイトヘッド / 思弁哲学 / 19-20世紀イギリス哲学 / 観念論と実在論 / 仮説 / ヒューエル / ダーウィン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イギリスの哲学者ホワイトヘッドの「思弁哲学」の形成過程を19・20世紀の科学哲学との関連から明らかにすることを目指すものである。前年度の研究において、ホワイトヘッドの「思弁哲学」がC. D. ブロードの『科学的思考』(1920年)での主張への批判を通して確立された立場であることを明らかにした。本年度はまず昨年の学会発表の内容を論文の形にまとめることに取り組んだ。 さらに本年度は19世紀の科学哲学の文献にまで読解の範囲を広げ、ホワイトヘッドの哲学の思想史的背景を探った。具体的には、彼の「思弁哲学」の鍵概念である「仮説」に注目し、ヴィクトリア朝時代の哲学者たちの仮説をめぐる議論がホワイトヘッドに影響を与えた可能性について検討を行った。ウィリアム・ヒューエルなどのヴィクトリア朝時代の科学哲学者に対してホワイトヘッドは批判的であって直接的な影響関係は一見ないかにみえる。しかし、ヒューエルに影響を受けたダーウィンの仮説観の受容を通して間接的な仕方でヒューエルの仮説観がホワイトヘッドの「思弁哲学」に組み込まれていることが本研究を通して明らかになった。この成果については国際ホワイトヘッド学会で発表を行った。 加えて、バーナード・ボザンケの『現代哲学における両極の一致』(1921年)の読解を行い、彼が1920年時点でのホワイトヘッドの科学哲学をどのように評価・批判しているかをまとめ、1924年以降に「思弁哲学」の構築に向かうホワイトヘッドが意識していたであろう当時の知的状況の一端を明らかにした。この研究成果は共著の論文集『世紀転換期の英米哲学における観念論と実在論』の論文(第3章担当)にまとめられている。 以上の研究でもってホワイトヘッドの「思弁哲学」の内実およびその形成過程、思想史的背景について多角的に検討することができた。
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