2022 Fiscal Year Research-status Report
中華民国初期における標準音の成立過程:読音統一会を中心に
Project/Area Number |
22K20045
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
陳 希 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (70965590)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 中華民国 / 国語形成 / 標準音 / 読音統一会 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国において標準語・標準音の制定が本格的に始まったのは、1913年に行われた読音統一会であった。本研究は、中華民国初期における標準音の成立過程を明らかにするために、以下の二点を目的として研究活動をおこなっている。 第一に、近代中国における国語形成の過程において、読音統一会がどのような政治的・社会的・思想的背景の下で展開され、どのような歴史的役割を担ったのかを実証的に解明することである。第二に、読音統一会が清朝末期の国語計画やその後の中華民国期の国語運動・施策とどのような関係にあったのかを分析し、近代中国の国語形成の構造について詳細に解明することである。 2022年度8月末時点(2022年9月~2023年4月末、研究中断)で、研究計画書に沿って、以下の研究をおこなった。 第一の目的に関しては、上海図書館や北京国家図書館など国外での資料調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス拡大の影響で渡航が難しく、実施には至らなかった。その代わりに、既に入手済みの関連資料を駆使し、読音統一会の歴史的背景と人的ネットワークについて分析をおこなった。 第二の目的に関しては、これまでの研究成果を踏まえたうえで、清朝末期の国語運動の立役者である労乃宣の活動を事例に、清朝末期の国語運動と立憲運動とのかかわりについて論文の執筆をおこなった。それにより、清朝末期の国語運動と立憲運動の関わりは概ね解明され、清朝末期の国語計画の実態も浮き彫りになっている。だが、第一子の妊娠・出産により、2022年9月より研究を中断せざるをえなかった。今後は、日本国内のほか、国外(北京・上海・台北)で調査する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の通り、第一子の妊娠・出産および育児のため、2022年度9月~2023年4月末まで研究活動を中断することとなったため、その期間に予定していた研究活動は次年度以降に持ち越す。 2022年8月末時点では、これまでの近代中国の国語形成史における研究成果をまとめ、論文の執筆を行った。その結果、学会誌の研究論文として掲載された。該当論文は「第19回太田勝洪記念中国学術研究賞」を受賞した。 また、入手済みの資料を使い、読音統一会で活躍した人物の人的ネットワークについて検討し、論文を執筆している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年4月からは、第一子も保育園に入園したため、研究活動を再開できた。今後は、研究計画書に沿って順次進めていく予定である。具体的には、研究中断に伴って繰り越しとなった研究については、研究実施期間中に執筆した論文の内容を整理し、学術論文として公表する。それにより、これまで注目されてこなかった読音統一会の政治的・社会的・思想的背景を明らかにしたい。これに加えて、日本国内(東京・京都)および海外(上海・北京)の档案資料などを使い、読音統一会の全貌を解明し、中華民国の標準音の成立過程について明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
第一子の妊娠・出産により、2022年9月から2023年4月末まで研究を中断したため、科研費の実行ができなかった。
|
Research Products
(1 results)