2023 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study of information paradox using analogue black holes in electric circuits
Project/Area Number |
22K20357
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
片山 春菜 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 助教 (70963685)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 擬似的ブラックホール / ソリトン / 超伝導量子回路 / ホーキング輻射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ブラックホールの情報パラドックスを考える舞台の構築のため,ブラックホールとの量子相関を考慮したホーキング輻射理論を再構築することを目的とした.これまで我々は,ジョセフソン伝送線路を安定に伝播する電流ソリトンが,擬似的ブラックホールとして振る舞うことを明らかにした.そこでは,ソリトンを古典的に取り扱い,ホーキング輻射に伴うソリトンのエネルギー減衰は考察してこなかった.そこで,本研究では,ソリトンとホーキング輻射の相互作用を取り入れることにより,ソリトンの減衰の定式化に成功した. また,超伝導非対称非線形誘導素子(SNAIL)を用いて,分散性と非線形性を制御することにより,ホーキング輻射の実験的観測に有利なシステムを提案した.これまでのシステムでは,ジョセフソン接合の4次非線形性に起因する4波混合パラメトリック増幅により,ホーキング輻射が増幅される.しかし,シグナル(ホーキング輻射)とアイドラ(パートナーホーキング輻射)の周波数はポンプ(ソリトン)の周波数に近く,これらの分離が困難なため,ホーキング輻射観測の障害となる.今回,3次非線形性を持つSNAILを用い,シグナルとポンプの周波数が離れた3波混合が実現される新たな擬似的ブラックホールを考案した.さらに,ポンプ周波数が低周波数に制限されるという課題を克服するため,同じSNAIL伝送線において,非線形シュレディンガー方程式に従う包絡線ソリトンを用いて,ポンプ周波数を調整可能にした. 本研究の過程で,SNAIL伝送線路の回路パラメータを制御することにより,タキオン場を再現できることがわかった.タキオンは,宇宙初期で起こったインフレーション期におけるタキオン凝縮を通して物質生成と関係する.したがって,本研究で開発したシステムは,ブラックホールの情報パラドックスだけでなく物質生成の基本過程の研究にも応用できることがわかった.
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Remarks |
本研究に関する受賞歴 2023年度版「アジアの科学者100人」, Asian Scientist Magazine, 2023年7月
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Research Products
(10 results)