2022 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ細孔壁との相互作用を利用したイオン液体の物性制御と物理リザバー計算への応用
Project/Area Number |
22K20436
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高 相圭 東京理科大学, 先進工学部電子システム工学科, 助教 (90963728)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / 金属有機構造体 / 物理リザバー計算 / 誘電緩和 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、イオン液体(IL)-金属有機構造体(MOF)間相互作用のメカニズム解明および制御パラメータの特定を目指して、IL充填MOF単結晶試料の磁気特性評価に注力した。材料の磁気特性は構造歪みや磁性元素の電子状態を敏感に反映するため、相互作用に関わる情報を感度良く抽出できる。 SQUID型磁化測定装置による磁化率評価の結果、Cu3(btc)2および[bmim][FTSI]を充填したCu3(btc)2の逆帯磁率の温度依存性は、1.8 K - 40 Kの温度範囲において両者共にキュリーワイス則に従う常磁性を示すことが確認された。一方で、キュリーワイス温度を見積もったところ、Cu3(btc)2では-1.98 K、[bmim][FTSI]充填後のCu3(btc)2では-0.366 Kと、有意な差が確認された。このキュリーワイス温度の絶対値の大きさは磁気相関の大きさを示しており、マイナス符号はそれが反強磁性的な性質であることを意味する。Cu3(btc)2を構成する第一近接Cu2+-Cu2+間の距離は約2.65オングストロームと短く、その磁気相関によって、Cu3(btc)2単体としては基底状態において反強磁性となることが知られている。したがって、[bmim][FTSI]の充填によりCu3(btc)2が元来有する反強磁性的な性質が劇的に弱められることが示された。これは、冷却過程における第一近接Cu2+-Cu2+間の熱収縮が[bmim][FTSI]の充填により抑制されることを示唆しており、[bmim][FTSI]のアニオン分子([TFSI-])が第二近接Cu2+-Cu2+間を架橋することでCu3(btc)2構造を補強するという我々が予想していたモデルと整合する。本研究により、IL充填に由来する相互作用のメカニズムが示されただけでなく、IL-MOF間の相互作用が初めて定量的に評価された。
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