2023 Fiscal Year Annual Research Report
網膜集積性光学ナノヒーターによる加齢黄斑変性関連サイトカイン分泌バランスの正常化
Project/Area Number |
22K20510
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
福田 亮介 富山県立大学, 工学部, 研究員 (30964704)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 光熱変換材料 / 網膜色素上皮細胞 / リポタンパク質改変体 / 脂質蓄積物 / 近赤外応答性 / 加齢黄斑変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度までに作製した疾患モデル細胞を利用して、網膜色素上皮細胞由来のサイトカイン分泌バランスの熱的制御試験を行った。本研究では、これまでに長期培養により脂質蓄積物を形成させた単層ヒト網膜色素上皮細胞株(ARPE-19)の作製に成功し、これを疾患モデル細胞とした。昨年度中に、単層ARPE-19細胞に対する30分間43度での熱処理が、脂質蓄積物の平均サイズを顕著に低下させることが明らかになっている。本年度はこの脂質蓄積解消のメカニズムを調べることを目的とした。まずは加齢黄斑変性患者により近いサイトカイン分泌方向性を示す網膜色素上皮モデル細胞の作製に着手した。先行研究により、ニトロ化反応を受けた細胞外マトリックスが、網膜色素上皮のサイトカイン分泌バランスを乱し、加齢黄斑変性患者様のサイトカイン分泌方向性を示すことが明らかにされている。加齢により機能低下した網膜色素上皮を再現するために、ニトロ化処理した細胞外マトリックスでコーティングした細胞培養インサート上で、ARPE-19を単層培養した。その結果、既報通り加齢黄斑変性患者と同様のサイトカイン分泌方向性を示す細胞層の作製に成功した。次に30分間43度での熱処理が、サイトカイン分泌方向性に与える影響を調べたところ、脂質蓄積物分解サイトカイン(マトリックスメタロプロテイナーゼ)の分泌方向性が、非ニトロ化処理群(正常網膜色素上皮群)とより近くなることを見出すことができた。以上の結果より、昨年度確認された脂質蓄積解消には、サイトカイン分泌方向性の改善が関係していることがわかり、熱的治療の有効性が明らかになった。昨年度作製に成功した光熱変換材料(インドシアニングリーン会合体)によるサイトカイン分泌方向性の制御という目標は達成できなかったが、同材料に光照射して生じる熱がサイトカイン分泌方向性を良化させる可能性を示すことができた。
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