2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Bench-Stable Pentafluorosulfanylating Reagents from Sulfur Hexafluoride
Project/Area Number |
22K20534
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
柏原 美勇斗 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (10963340)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 六フッ化硫黄 / 9-フルオレノール / 一電子移動 / 有機触媒 / 温室効果ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では安価かつ安定な9-フルオレノール誘導体を用いて,高い温室効果を有する六フッ化硫黄を分解し,新たなペンタフルオロスルファニル基含有化合物を合成することを目指した。まず,理論化学計算に基づき,高い還元力を有すると考えられるいくつかの9-フルオレノール誘導体の合成をおこなった。種々の置換基を導入できる共通中間体の合成法を確立し,効率よくライブラリーを構築することができた。次に,合成した9-フルオレノール誘導体を塩基の存在下,六フッ化硫黄ガス雰囲気下で加熱撹拌した。その結果,当初想定したようなペンタフルオロスルファニル基含有化合物の生成は確認できなかったが,六フッ化硫黄が分解し,単体硫黄とフッ化物イオンが生成していることが示唆された。9-フルオレノールを用いない条件においては硫黄やフッ化物イオンの生成は確認できなかったこと,またこれら生成物の定量から,9-フルオレノールが還元触媒として機能していることが分かっている。置換基による触媒活性の差を調査した結果,置換基を持たない単純な9-フルオレノールが最も高い活性を示した。そこで反応条件を詳細に検討したところ,室温,1気圧という極めて温和な条件でも,六フッ化硫黄の触媒的完全分解が進行することが確認できた。さらに,反応終了後には9-フルオレノールまたは9-フルオレノンが高い収率で回収されることが分かっており,本研究成果は六フッ化硫黄分解技術としての応用も見込まれる。一方,分解の途中段階で生成している,硫黄・フッ素を含む中間体を新たな有機合成反応に利用する手法も検討したものの,望みの含硫黄または含フッ素化合物は得られなかった。しかし今後,反応条件や触媒を調整することで,六フッ化硫黄の分解速度をコントロールし,適当な有機化合物で捕捉できる可能性があると考えられる。
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