2023 Fiscal Year Annual Research Report
亜高山帯に分布するオオシラビソにおける樹体内炭素分配と成長量の解明
Project/Area Number |
22K20591
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田邊 智子 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (40967402)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 気候変動 / 炭素蓄積量 / マツ科 / 地上部成長量 / 樹体内炭素分配 / 炭素安定同位体 / フェノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木生産量には年変動がある。それらの要因について、ある高さの幹肥大量を指標とし、月別の気候要素との網羅的な統計解析が世界中で行われてきた。一方で、幹肥大量の多い年に枝肥大量や幹枝伸長量も多いとは限らないことが分かりはじめた。 本研究は、成長量に影響する主要因が、幹と枝という部位間、伸長と肥大という成長様式間で異なるのではないかという視点に立ち、「各成長量は一年のうちいつの気候の影響を最も受けるのか?」という問いに答えることを目的とした。幹と枝の伸長量と肥大量を対象に、成長フェノロジーを測定し、炭素安定同位体を用いた光合成産物の追跡を繰り返し行った。樹木の時間軸で期間を区切ったうえで、その間の光合成産物の行き先を照合する計画である。 成長フェノロジーの測定は2023年成長期に行った。肥大量は、幹の地際から5 ㎝位置および樹冠下部の一次枝基部にマイクロデンドロメーターを装着して直径変化をロガーに記録した。伸長量は、幹および樹冠上部の一次枝と樹冠下部の一次枝を対象とし、試験地へ通い物差しで当年枝長を計測した。炭素安定同位体を用いた光合成産物の追跡は、13CO2をトレーサーとして使用した。大型ビニール袋で個体を覆い、高濃度の13CO2を光合成により葉から吸わせることで炭素をラベルした。ラベリングは2023年成長期に計9回行い、それぞれ異なる3個体を対象とした。 幹枝ともに、伸長成長が停止したのち肥大成長が開始した。成長時期の違いから、成長量に影響する気候要素も異なる可能性が明らかとなった。本結果に基づいて季節を分割し、その間にラベリングを実施した個体を同位体分析用とした。現在は同位体分析に向けて試料準備を進めている。分析結果は9月に開催される国際学会10th Pacific Regional Wood Anatomy Conferenceにてまずは報告予定である。
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