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2022 Fiscal Year Research-status Report

ヤギ・ヒツジにおける内部寄生虫薬耐性の縦断的実態把握と日本独自の対策技術の開発

Research Project

Project/Area Number 22K20613
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

塚原 洋子  京都大学, 農学研究科, 特定講師 (10958432)

Project Period (FY) 2022-08-31 – 2024-03-31
Keywordsヤギ / ヒツジ / 内部寄生虫 / 薬耐性 / 国内縦断的調査
Outline of Annual Research Achievements

2022年度の成果として、まず研究環境を整えることができたことがあげられる。現在在籍している研究室がこれまで手掛けたことのない寄生虫や血液の分析を取り扱うために、新たな実験スペースを確保した。必要な備品の一つであるヘマトクリット遠心機は、昨今の機械不足のため、発注から納品まで4か月を要したが、2月末までには納品が完了し、他の消耗品、さらに国内各地域で調査を実施するために必要なノートパソコンや調査用具も揃え、3月には国内の縦断的調査を遂行する準備を整えた。一方で、研究室にある冷蔵庫などの備品が共有できず、予定外であったものを購入することになった。
二つ目の成果として、捻転胃虫と指状糸状虫の対策について、国内における一部の獣医師および動物や医薬品販売業者からの情報が収集できたことがあげられる。特に後述する指状糸状虫の診断方法や獣医師らが選択する薬に関する情報は、本プロジェクトの方向性を変更する重要な問題であり、長期的に取り組む必要性を見出した。
三つ目の成果として、全国から調査協力依頼が届いていることと、実際に国内における縦断的調査が開始できたことがあげられる。12月に全国山羊ネットワークの会報を通じて、全国の生産者に調査への協力を求めた。反応は予想をはるかに超えて大きく、国内における小型反芻家畜の体内寄生虫が各地に蔓延しており、生産者がこれを問題視していることが明らかとなった。また、国内の研究者や獣医師からも多くの協力申請があったことは、今後のプロジェクト展開に大きなプラスとなると考える。なお、3月には、沖縄県家畜衛生試験場から重篤な寄生虫感染例の連絡があり、本島・宮古島・多良間島・石垣島を皮切りに全国調査を開始したが、一部農家を除いて十分な寄生虫卵が回収できなかった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究環境の整備を行う傍ら、国内の獣医師から意見収集をしたところ、小型反芻家畜(ヤギ・ヒツジ)については、獣医科の大学でも習うことはなく、内部寄生虫問題に限らず、情報が不足しているので治療に自信がない、あるいはウシに準ずるとする意見が一般的で、薬品選択や投与量も獣医師それぞれで見解が異なることが判明した。この事前調査が実態を反映しているとすれば、国内における一般的な対策が無いことになる。そこで、本プロジェクトの縦断調査の中に、獣医師に対するアンケートを含むことにした。さらにin vivoでの虫卵数減少試験を行う以前に、現場における駆虫薬の使用歴を明らかにすることが重要と考えるに至った。
国内でも気温が高く内部寄生虫問題がすでに発生しているという沖縄県家畜衛生試験場、家畜保健衛生所からの協力申し出があり、3月に6日間かけて沖縄本島、宮古島、多良間島、石垣島にまたがる9軒のヤギ生産者から60頭分のサンプルを採取することができた。さらに生産者を集めた講習会を実施し、同時に生産者および獣医師から聞き取り調査を行った。収集した血液サンプルと糞サンプルについては分析が終了し、協力生産農家に対する検査結果の送付が家畜保健衛生所を通じて配布されているところである。採取したサンプルから、耐性検査を実施するための十分量の寄生虫卵が回収できなかったものもあり、再度のサンプリングが必要な見込みである。さらに本調査では、沖縄県家畜衛生試験場が準備した調査地を訪問することになり、島間の移動にかなりの金額がかかった。2023年度予算を5万円分前倒しして利用したが、それでも不足した20万円相当は、自己のプライベート資金を持ち出すことになった。

Strategy for Future Research Activity

本プロジェクトで捻転胃虫とともにターゲットにしている指状糸状虫は、アジア地域に特有のフィラリアであり、1950年代には既に報告がある(大越,1951)が、その後の研究はあまり見られない。原因として病変部から虫体が検出されることはまれなことがあげられ、結果として腰麻痺を起こす病理発生機序にはいまだ不明な点が多い(中本ら, 2016)。実際、文献や獣医師らから情報集したところ、確定診断はつき難く、症状から判断するあるいは投薬による反応から判断することが多いとのことであった。病理検査から確定診断が可能なこともあるが、生存中には不可能であるとの話もあった。本件について、研究実施者が所属するアメリカ小型反芻家畜寄生虫コンソーシアムにも問い合わせたが、世界的な反芻家畜寄生虫学の権威であるRay Kaplan博士も聞いたことがないとのことであった。これらのことから、指状糸状虫の本プロジェクトによる限界と今後の研究の必要性(簡易抗原キットの開発など)が明らかとなった。
全国から調査依頼が届いているものの、調査費が減額されているため、全国の訪問農家を限定せざるを得ないが、2023年度は、沖縄県(再サンプリング)、四国地方、北陸地方、北海道での調査を行う予定である。

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Published: 2023-12-25  

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