2022 Fiscal Year Research-status Report
Approaching the evolutionary origin of the sporophyte generation from multicellular developmental variation in a green alga
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22K20644
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀之内 祐介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特任助教 (10962714)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 生活環 / アオサ藻綱 / 胞子体 / 世代交代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、緑藻エゾヒトエグサで発見した多細胞体が配偶体と共通の発生プログラムにより派生的に生じた胞子体かを検討することで、緑藻の胞子体の起源として流用仮説を支持する間接証拠を得ることを目的としている。具体的には、エゾヒトエグサの接合子から発生した多細胞体が、生殖し世代交代を行う胞子体か、派生的に獲得されたのか、形態発生が配偶体と類似しているか、を明らかにすることが目的である。 本年度は、(1) 接合子が多細胞体に発生する条件の解明、(2) 多細胞体は生殖し世代交代を行う胞子体かの検証、を行った。(1)実験所付近の磯で採集したエゾヒトエグサから接合子を作成し、水温、栄養塩濃度、照度、などの培養条件を変えて培養した。多細胞体に発生する割合は条件ごとに異なり、富栄養条件や、初夏の室蘭の気候に近い14度長日条件などで多細胞体が多く発生した。(2)作成したエゾヒトエグサの雌雄特異的性マーカー、核内の雌雄特異的領域のみを染色する蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法により多細胞体を解析した。その結果、胞子体は雌雄両方の遺伝因子を持つことが確認された。相対核 DNA 量比較による核相解析により、単相の配偶体と比べて核量が2倍である複相であることを明らかにした。これらの結果から、多細胞体は胞子体に相当することが示唆された。さらに、多細胞体が生殖可能な胞子体であることを示すため、条件を変えた培養実験で多細胞体の生殖経路を明らかにした。長日条件での培養により、遊泳細胞を放出すること、それらは単細胞のシストに発生することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画時に設定した実験内容の内、半分程度を遂行し、それらについて良好な結果が得られたため。加えて、これらの成果、特に培養実験で得られた新たな生活環ステージは、次年度以降の研究に用いる実験材料になっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒビミドロ目も系統樹を作成し、目内での複相世代の進化史を明らかにするため、野外採集を行うことで可能な限り多くのヒビミドロ目緑藻の単藻培養株を作成し、それを利用して遺伝情報を得る。多細胞体(胞子体)由来の単細胞シストの成熟誘導を行い、多細胞体を経由した生活環経路の全体像を明らかにする。接合子が多細胞体に発生する過程の形態変化を詳細に追跡し、培養により得た遊走子からの配偶体の形態発生と比較することで、両者の類似性を評価する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、調査旅行が制限された影響で、旅費やその後の実験に使用する消耗品費に影響したため。この次年度使用額は、実験に使用する試薬や実験器具など消耗品費や旅費として使用する予定である。
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