2023 Fiscal Year Research-status Report
タンパクのO-GlcNAc化に着目した新規HFpEF治療確立に向けた基盤的研究
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22K20646
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
門坂 崇秀 北海道大学, 大学院医学研究院 心不全遠隔医療開発学分野, 特任助教 (40968343)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | O-GlcNAcylation |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化人口の増加に伴い心不全の罹患人口は増加している。心不全の病態には細胞内カルシウムハンドリング異常の関与が指摘されている。我々は糖尿病モデルマウスを用いて、心収縮の保たれた心不全(HFpEF)モデルマウスにおいて蛋白の糖鎖による翻訳後修飾O-GlcNAcylationが細胞内カルシウムハンドリング制御タンパクである、CaMKIIやPLBの機能に影響を与えている可能性を示唆する結果を得た。本研究は糖尿病性HFpEFと非糖尿病HFpEFにおけるO-GlcNAcylationの比較とその抑制が細胞内カルシウムハンドリングの改善や血行動態の改善に影響を与えるかを検討することを目的とした。 現在までに、糖尿病性モデルマウスのHFpEFモデルでは、蛋白全体のO-GlcNACylationが増加しており、それを抑制する薬剤を使用することで、カルシウムハンドリング異常が改善することを示した。また、近年HFpEFに対して有効性が示されつつあるSGLT2阻害薬が糖尿病性HFpEFモデルマウスにおいて、直接的に心筋タンパクのO-GlcNAcylationを抑制すること、また、心筋細胞においてSGLT2阻害薬がGlucoseの細胞内への取り込みを抑制することがわかった。以上の結果からSGLT2阻害薬の心筋細胞に対する直接効果は、心筋細胞においては基質であるGlucoseの取り込みを抑制することによって、タンパクのO-GlcNAcylationが抑制されている可能性が考えられた。 CaMKIIおよびPLBを免疫沈降法により分離し、それぞれのO-GlcNAcylationの程度をウェウスタンブロッド法を用いて評価を行うことを試みたが、評価に耐えうる結果が得られていない。また、それと並行して虚血性心疾患モデルを作成し、虚血性心疾患モデルにおける細胞内カルシウム動態の評価を行っている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
O-GlcNACylationの心筋細胞内カルシウムハンドリングに対する影響を詳細に評価する目的で、糖尿病性モデルにおいてタンパク個々の翻訳後修飾を評価するために、免疫沈降法を用いた評価を追加して行っているが、良い結果が得られていない。 非糖尿病性HFpEFモデルの作成と評価が進まず、虚血性心疾患モデルでの細胞内カルシウムハンドリングの評価を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きより深い病態の検証を行うため、免疫沈降法での評価を継続する。また、質量分析などの別の方法も模索する予定である。 虚血性心疾患モデルでの評価も並行して行う。 非糖尿病性HFpEFモデルの作成と評価を継続する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、非糖尿病HFpEFモデル動物としてDeoxycorticosterone acetate(DOCA)-salt ratを作成し、ミラーカテーテルでの心内圧測定を行うことで、HFpEFの証明を行い、モデルを作成する予定であったが、ミラーカテーテルの故障により検証方法を再度検討する必要が出た。そこで現在は他の実験者が作成していた虚血性心疾患モデルでの検証に一部切り替え実験を進めている段階である。そのため、実験動物の購入や試薬の購入に費用を使用することができなかったため、次年度への繰り越しが生まれた。 次年度は糖尿病性モデルでの検証をさらに進め、虚血性心疾患モデルでのO-GlcNACylationの関与をも検討していく予定である。また、それらの検証が終わり次第、Cre-loxPシステムを利用し心筋特異的OGT遺伝子コンディショナルノックアウトマウスを作成し、糖尿病性心不全モデルマウスおよび、虚血性心疾患モデルマウスを作製し検討を行っていく。また、現時点での研究成果についても学会での発表を予定している。
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