2023 Fiscal Year Annual Research Report
高速大規模解析が可能とするアルツハイマー病モデルにおける神経脱落様式の網羅的解析
Project/Area Number |
22K20692
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
伊藤 祥吾 順天堂大学, 医学部, 特任研究員 (10966245)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | アルツハイマー型認知症 / 軸索変性 / 全脳解析 / 内在性IgG / 免疫組織化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アルツハイマー型認知症(AD)の神経脱落において、神経細胞のどの部位が、どの順で、どのように脱落していくのかを明らかにすることである。このために、脳内にアミロイドβ(Aβ)を蓄積するADモデルマウスを対象とし、全脳レベルでの軸索・変性軸索・細胞体・Aβの定量に取り組んできた。冠状断の厚さ50 μmの脳切片に対し、全面が一枚の画像に収まる光学切片の取得方法を確立した。本手法によって取得した画像では、任意の脳領域を拡大し軸索の一本ずつを識別可能である。さらに、画像解析ソフトImageJ用いた独自の解析手順を構築し、軸索長を定量することに成功した。軸索・変性軸索・細胞体・Aβを脳領域ごとに定量するため、取得画像に対してbrain atlasをレジストレーションする手法も確立した。しかしながら、ADモデルマウスは病理進行に伴って脳萎縮が認められ、これによりレジストレーションが困難という課題が生じた。現在はこの課題の解決に向けて検討を進めている。 本研究課題の遂行中に、ADモデルマウスでは内在性IgG抗体が脳実質に存在し、Aβプラーク近傍に特に強く集積していることを偶然にも見出した。正常ではIgG抗体が脳実質に流入することはほとんどないと考えられている。このため、この発見をADにおける重要な病理と捉え、この内在性IgGをPA-IgG(plaque-associated endogenous IgG)と名付けた。PA-IgGは、マウスモノクローナルIgG抗体を用いた間接法による免疫組織化学において二次抗体のoff-target bindingを生じ、特異的な染色が妨げられることを見出した。そして、マウスIgGのサブクラスに特異的な二次抗体の使用によってこの問題を回避できることを発見した。
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