2023 Fiscal Year Research-status Report
がん悪液質に伴う骨格筋萎縮の複合的要因の精査及び、薬学的予防戦略の探索
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22K20715
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松金 良祐 九州大学, 大学病院, 薬剤師 (70957927)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | がん悪液質 / アナモレリン / 骨格筋 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「がん悪液質の予防」によるがん患者のQOL上昇や予後延長を達成するための新規治療標的探索と、臨床応用の評価を行うことである。骨格筋の萎縮に対する腫瘍由来の炎症性サイトカインの役割は兼ねてより注目され、関連した研究も多い。本研究では、それらに加えがん悪液質の罹患率が高い膵臓癌・非小細胞肺癌で使用される殺細胞性抗がん薬、分子標的薬を中心に、抗がん薬による骨格筋毒性の有無やその分子メカニズムを調査し、「骨格筋萎縮の予防」に焦点を置いた研究を立案している。本年度は、筋芽細胞の細胞株であるC2C12を用いた実験を中心に行い、炎症性サイトカインや各種抗がん薬(シスプラチ ン、カルボプラチン)による筋委縮の観察、およびメカニズムに関連する因子(アポトーシス関連因子、タンパク質分解酵素、マイオカイン等)の分子生物学的解析を実施した。
また、上記で得られた因子を患者由来検体を用いて評価することで、臨床応用性の確認を行う。骨格筋の組織採取は侵襲的であるため、従来がん悪液質患者の骨格筋検体を評価することは困難であった。申請者は血液検体(リキッドバイオプシー)に着目し、骨格筋から血液中に放出される細胞外小胞体(エクソソーム)を選択的に分離し、内包される遺伝子情報(mRNA, microRNA)の解析手法の開発を進めている。現在、少量の健常人血漿サンプルより骨格筋特異的なmiRNA(miR-1,miR-206)を含むエクソソーム分画の濃縮に成功している。がん悪液質患者の臨床研究(前向き観察研究)も進んでおり、骨格筋量を反映する除脂肪体重を計測しつ つ、それと並行した血液サンプルの収集を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
筋芽細胞の細胞株であるC2C12による評価法の確立を行い、炎症性サイトカインや一部抗がん薬の評価を実施した。炎症性サイトカインや抗がん薬に共通した骨格筋萎縮のメカニズムを検討した結果、その萎縮を抑制する可能性のある化合物の導出に成功した。しかしながら、in vivoでの検討まで実施するに至らず、やや進捗が遅れている。
一方で、臨床検体の蓄積および、リキッドバイオプシーを用いた骨格筋萎縮の評価法の確立は予定通り実施できており、こちらはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、がん悪液質のin vivoモデルを用い、導出した候補化合物の骨格筋萎縮予防効果の検討を行うとともに、より詳細な骨格筋萎縮メカニズムの解明を実施する。
また当初の計画通り、がん悪液質患者の臨床検体を用いて、集積した血液検体より骨格筋特異的エクソソームを抽出する。それらの解析を通じて、上記治療標的の臨床応用性の確認を行う。
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Causes of Carryover |
本年度、動物実験による検討を実施しなかったため支出が減少し、次年度使用額が生じた。次年度は動物実験に加え、臨床検体のリキッドバイオプシーの抽出およびその内容物 (mRNA, miRNA)の解析を実施する。予定患者検体は20検体としており、これらの解析のために使用する。
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