2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K20748
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
羽田 優花 日本医科大学, 大学院医学研究科, ポストドクター (80962349)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 成長 / 血管発生 / 系譜追跡実験 / ゼブラフィッシュ / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、発生期の内皮細胞を遺伝学的に標識し、これら細胞が成体の各臓器の血管形成にどの程度寄与しているかを明らかにするために、誘導性Cre/loxP系を立ち上げ、解析を行なった。内皮特異的遺伝子kdrlのプロモーター下でCreERT2及びeGFPを発現し、ubb:loxP-stop-loxP-mCherry遺伝子を有するゼブラフィッシュ胚を4-Hydroxytamoxifen(4-OHT)で処理することで、発生期(受精後3日目)の内皮細胞をmCherryで標識する方法を用いて、脳や体幹部においては全血管の7割以上をmCherryで標識することに成功した。しかし、肝臓や腸においては発生期でのラベルができなかったため、別の内皮特異的遺伝子fli1のプロモーター下でCreERT2を発現する魚を作成した。その結果、肝臓や腸においても3~7割の発生期の内皮細胞をラベルすることができた。今後、ラベル効率をさらに上昇させるとともに成魚における解析を進める。 これまでに、kdrlプロモーターを用いて発生期の内皮細胞をラベルした成魚を解析した結果、脳や体幹部において発生期の内皮細胞が同効率で維持されていることを発見した。そのため、これら解析部位に関しては、発生期に形成された血管内皮細胞が自己増殖をして成体の血管を形成することが示された。この結果を踏まえ、上記魚について4OHTを短時間処理し、成魚において1細胞に由来する内皮細胞クラスターの大きさを解析することで、発生中の内皮細胞の増殖率が一様かどうかを調べることにした。 さらに、各臓器の血管を形成する前駆細胞が存在するのか、また、どの程度の細胞集団が臓器血管の形成に関与するのか知るため、内皮細胞特異的プロモーター下にzebrabowコンストラクトを発現する魚を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成長期の血管新生過程について、①発生期に形成された血管内皮細胞が自己増殖するのか、もしくは、②発生期にできた内皮細胞以外の細胞が寄与するのか、全く未知であったが、現段階で、一部の臓器または組織(脳と体幹部)の血管については、①の可能性を強く示唆するデータが得られた。技術面においては、サイズの大きい成魚のサンプルについて、透明化の最適方法を見出すことができ、解像度の高いイメージングには未だ課題はあるものの、ある程度安定して結果を得られている。 kdrlプロモーター下で発生期の全身の血管内皮細胞をラベルするために作成した魚では、タモキシフェンによる誘導を行っても肝臓や腸に関しては発生期にラベルできないことが明らかになったが、新たに作成したfli1プロモーターを持つ魚を用いることで、これらの臓器に関しても解析を行なえるようになり、現在サンプル数を増やしている。さらに、成長期の血管内皮細胞のクローナル解析を行うために、血管内皮細胞を時期特異的にマルチカラーでラベルする魚(内皮特異的プロモーター下でzebrabowを発現する)を作成中であり、現在F2の取得までできている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、発生期に構築された血管内皮細胞の増殖率に着目した解析を行なう。成長過程において内皮細胞の増殖率は一定なのか、もし一部に増殖率が他よりも高い内皮細胞があれば、その特徴的遺伝子は何かなどに着目して研究を進める。また、これまでは発生期にラベルした後、成魚になるまで成長させてから解析を行なってきたが、今後は解析時期を成魚より前の段階に遡ることで、成長期の血管形成過程に着目した解析を進める。さらに、発生期に形成された血管内皮細胞以外の細胞が臓器血管に寄与する可能性があるかを調べるために、現時点で解析できていない臓器(腎臓・甲状腺・眼の網膜など)についての解析を継時的に進める予定である。
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Causes of Carryover |
予定金額よりも比較的安く物品が購入できたため、残金が残った。今年度は、4-Hydroxytamoxifenを用いた系譜解析を精力的に行うため、その為の試薬等の購入や共通イメージング機器の使用料などに使用する予定である。
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