2022 Fiscal Year Research-status Report
エリブリンにおける免疫細胞を介した抗腫瘍効果およびその免疫学的機序の解明
Project/Area Number |
22K20782
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大矢 和正 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (70963552)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / エリブリン / レジデントメモリーT細胞 / CD103 |
Outline of Annual Research Achievements |
C57BL/6野生型マウスの背部にMC38(マウス大腸癌細胞株)を皮下注した担癌モデルマウスにおいて、エリブリンの投与によって腫瘍内の免疫細胞がどのような変化を起こすかを免疫染色を用いて検討したところ、エリブリンを用いることで腫瘍内におけるCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞が増加する一方でCD11c陽性細胞が減少することが判明した。 フローサイトメトリーを用いて腫瘍内に浸潤しているCD4陽性T細胞における制御性T細胞の割合を解析したところ、エリブリンの投与では制御性T細胞の割合は変化しないことが判明した。 また、エリブリンの投与により腫瘍内に浸潤したCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞における活性化マーカー(CD38, CD69)のほか、グランザイムBとパーフォリンの発現が増加した。 CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞のどちらがエリブリンの抗腫瘍効果に関わっているかを検討するために、担癌モデルマウスに抗CD4および抗CD8中和抗体を投与して目的の細胞を除去したうえで腫瘍増殖の変化を評価すると、CD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞を各々除去した場合にエリブリンによる腫瘍増殖抑制効果がみられなかった。これらの結果からエリブリンの抗腫瘍効果においてCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞の両方が重要であると考えられた。 次に、CD103欠損マウスを用いた担癌モデルマウスにおいて腫瘍内に浸潤する免疫細胞を解析した。免疫染色を用いて腫瘍内に浸潤するT細胞数を評価したところ、CD103欠損マウスではエリブリンを用いても腫瘍内に浸潤するT細胞数は増加しないことが判明した。また、CD103欠損マウスでは、野生型マウスでみられたエリブリンによるT細胞の活性化マーカーやグランザイムB、パーフォリンの発現上昇がみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
担癌モデルマウスにおけるエリブリン投与の手技を安定して行うことが可能であり、研究に大きな遅れはない。これまでの研究結果によりエリブリンの抗腫瘍効果における獲得免疫の重要性が明らかとなった。In vivoだけでなくin vitroでの条件検討も終了し、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
エリブリンが免疫細胞に及ぼす作用を詳細に検討するため、in vitroで脾臓細胞から単離したT細胞、骨髄系細胞にエリブリンを添加した際のサイトカイン産生や発現分子の変化について解析する。エリブリンによりT細胞におけるチェックポイント分子の発現が上昇した場合には、チェックポイント分子の阻害抗体とエリブリンを併用し抗腫瘍効果が増強するか検討する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り実験が進んだものの、試薬の使用状況により次年度使用額が生じた。今後は次年度使用額をあわせた研究費をもちいて、免疫を介したエリブリンの抗腫瘍効果における機序を解明する。
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