2023 Fiscal Year Annual Research Report
本邦がんゲノムリアルワールドデータを用いたがんの人種・地域間差の解明
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22K20808
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
斎藤 優樹 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (40964755)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | がんゲノム医療 / がん遺伝子パネル検査 / 遺伝子異常 / 人種・地域間差 / TP53遺伝子 / 大規模データ解析 / 治療標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国立がん研究センター・がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に蓄積された約5万例の日本人がん遺伝子パネル検査データを解析し、日本人におけるがんゲノム異常の全体像や特徴、がん遺伝子パネル検査の臨床的有用性を明らかにした。 具体的には、上記データと米国癌学会が収集している米国白人データ(GENIE)との遺伝子変異頻度の比較を行った。その結果、352のドライバー遺伝子とがん種の組み合わせの中で、本邦がん患者で頻度が高い14の組み合わせ・頻度が低い4の組み合わせを同定した。特に、大腸がん・胆管がん・頭頸部がんなどの10がん種において、日本人でTP53遺伝子変異頻度が高いことを明らかにした。また、GENIEに含まれる米国アジア人データと米国白人データを比較したところ、多くのがん種において同様に米国アジア人の方がTP53遺伝子変異頻度が高いことを明らかにした。TP53遺伝子における変異の種類・部位には明らかな違いを認めなかった。 次に、C-CATの日本人データとGENIEの米国白人データを用いて、治療薬の標的となるゲノム異常を有する症例の割合を比較した。がん種別に比較すると、治療標的となるゲノム異常を有する症例数の割合はほぼ同程度であったが、全体では、日本人に比べて白人の方が割合が高かった(C-CATの日本人データ:18.3%、GENIEの米国白人データ 26.8%)。これは、C-CATの日本人データには、治療標的となるゲノム異常が少ない膵臓がん・胆道がんなどの症例が多いためと考えられる。 このように、研究代表者は、米国白人データとの比較により日本人のがんゲノム異常の特徴を解明し、がん遺伝子異常の人種間差を明らかにした。
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