2023 Fiscal Year Research-status Report
発がん過程における細胞老化への運命決定の分子基盤解明
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22K20816
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中宿 文絵 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (50965887)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | p16 / p21 / 細胞老化 / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、老化関連遺伝子の発現の有無が腫瘍細胞の増殖および薬剤応答性に与える影響をin vitroで評価することを計画していた。老化関連遺伝子(p16またはp21)を発現した細胞をEGFPで標識するレポーターマウスに、Krasの発がん性変異体(G12D)を発現させ、形成された膵臓の病変からオルガノイドを作製した。しかしながら、このオルガノイドは、in vitroにおいて長期間継代培養し続けることが困難であった。Pdx1-Cre:LSL-Kras G12D, LSL-Trp53 R172H(KPC)マウスは膵臓がんのモデルとして受け入れられており、この膵臓がん組織から樹立したオルガノイドは、継代培養可能であった。また、このマウス膵臓がん組織は、p16およびp21を発現していることを免疫染色にて確認した。そこで、Kras G12DとTrp53 R172Hを同時に発現誘導するためのプラスミド(tetO-HA_Kras G12D-P2A-Trp53 R172H)を作製し、ES細胞に導入した。qPCRで、Kras G12DとTrp53 R172Hがドキシサイクリン依存的に共発現していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p16またはp21の発現の有無が増殖能および薬剤応答性に与える影響をオルガノイドにて評価する予定であった。Kras G12Dの強制発現で形成された膵臓の病変からオルガノイドを樹立したものの、増殖性を維持したまま継代培養することができなかった。そこで、Kras G12DとTrp53 R172Hを同時に発現誘導可能なコンストラクト(tetO-HA_KrasG12D-P2A-Trp53 R172H)を新たに作製し、ES細胞に導入した。評価に必要な材料の作製が完了しており、オルガノイドを樹立するためのプロトコルの整備も終了しているため、概ね順調に進んだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回新たに作製した発がん誘導マウスとレポーターマウスを組み合わせ、ドキシサイクリン依存的にマウス膵臓にがんを形成させる。この膵臓がん組織からオルガノイドを樹立し、細胞老化関連遺伝子(p16およびp21)を発現したことを示すEGFP陽性細胞と陰性細胞の増殖能の比較と薬剤応答性の比較を行う。
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Causes of Carryover |
p21およびp16レポーターマウスにKrasの発がん性変異体(G12D)を発現させ誘導された膵臓の病変からオルガノイドを樹立し、老化関連遺伝子の発現の有無による増殖能と薬剤応答性への影響を評価することを計画していた。しかしながら、この膵臓の病変からオルガノイドを樹立したところ、in vitroで長期間継代培養することが困難であり、増殖能の評価ができなかった。そこで、発がん誘導可能なモデルを別途作製する必要性が生じたため、当初計画していた研究費を全額使用するに至らなかった。今年度は、繰越した研究費を使用し、研究課題を進める。
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