2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K20820
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 拓也 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (20782915)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 大腸癌 / OPG |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌は日本人のがん罹患数第一位(2019年)、がん死は第二位(2021年)の癌種で、罹患患者数は年間15万にのぼり、死亡数は年間5万2千人にのぼる(2021年全国がん登録)。大腸癌は原発にとどまるうちは治癒切除可能なことも多いが、ひとたび転移をきたすと致命的となるケースが多く、ステージ4大腸癌の5年生存率は17.3%と低い(国立がん研究センターがん情報サービス)。したがって、転移性大腸癌に対する治療戦略を構築することが重要である。特に大腸癌の転移の中でも肝転移がもっとも頻度が高く、大腸癌肝転移の分子機序を多角的に解明することは極めて重要となる。本研究ではOsteoprotegerin (OPG)という分子に着目し、大腸癌肝転移の分子機序を腫瘍微小環境の観点からの解明を試みた。本研究に先立ち我々がTCGAの公共データベース(COADREAD)を用いたin silico解析を行ったところ、OPG発現が低い大腸癌では5年のoverall survivalが有意に低下していた。大腸癌においてOPGに着目した文献は少ないが、その中でも相反する報告があり(Tsukamoto et al. Clinical Cancer Research 2011、Kim et al. Oncotarget 2016)、未だ一定の見解を得ていない現状である。本研究では当院での大腸癌手術検体を用いて再度OPGの免疫染色または腫瘍組織のmRNA発現解析を行い、それと患者背景、予後の相関を統計学的に解析する。また、TCGAを用いたin silico解析からはOPGの発現低下が予後不良となることが良そうされるが、大腸癌細胞株を用いてOPG発現低下が予後不良となりうる分子メカニズムの解明を試みる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず当院の大腸癌臨床サンプルを使用したOPGの免疫染色と予後解析を行った。その結果、OPGの発現が減弱している大腸癌では、overall survivalもrelapse free survivalも悪化していることが分かった。これはTCGAデータを用いたin silico解析と一致する結果であった。次に当院の大腸癌臨床サンプルの中から、大腸癌原発巣と肝転移巣の切除サンプルを両方有する患者コホートを抽出し、OPGの免疫染色を比較した。興味深いことに、原発の大腸癌でOPG発現を有している患者においても、肝転移巣ではOPG発現が低下していた。大腸癌を含む多くのがん種では、tumor heterogeneityの存在が知られている。すなわち腫瘍組織内の癌細胞は均一の集団ではなく、複数のphenotypeの集団と認識されている。この意味するところは、大腸癌肝転移巣ではOPG発現の低いものが選択的に肝転移を形成している可能性があるということである。以上より、大腸癌の特に肝転移にfocusし、今後OPG発現の有無による転移メカニズム解析をin vitro、in vivoで行っていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
大腸癌細胞株を使用し、OPG発現の高い細胞株にはOPGのCRISPR-Cas9を用いたノックアウトを導入し、OPG発現の低い細胞株にはOPGの過剰発現をレンチウイルスを用いて導入する。OPGはRANKLのデコイ受容体として知られており、RANKLの受容体RANKはマクロファージに高発現していることが知られており、マクロファージと大腸癌細胞株の相互作用に着目しin vitroの実験を行う。マクロファージはヒト末梢血中の単球を単離し代用する。また、in vitroの実験系としては、OPG発現細胞株、OPG非発現細胞株を用いて、大腸癌肝転移モデルを作成する。大腸癌肝転移モデルは、我々研究室で経験豊富な脾注肝転移モデルを採用する。これらを用いて、OPGの発現の有無で肝転移の形成に差があるかを確認する。また、OPG非発現細胞株を用いて、抗RANKL中和抗体を使用することで、肝転移が抑制されるかを検証する。本研究の最終目標としては、既に臨床現場で使用されている抗RANKL中和抗体を使用することでOPG非発現大腸癌の肝転移が抑制されるかを検証することである。
|
Causes of Carryover |
有効な利用のため小額の繰越金が生じた。 次年度の物品費に充当の予定である。
|