2023 Fiscal Year Annual Research Report
新規統合失調症発症モデルにおける線条体神経活動記録
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22K20849
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅本 祥央 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (30967469)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ドーパミン / 統合失調症 / D2受容体 / 大脳基底核 / 感作 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度においては、前年度で確立したマウスの低濃度メタンフェタミン(MAP)感作下における認知課題3CSRTT実施パラダイムによって、統合失調症発症に関連した異常行動について検討を行った。結果、MAP感作下の個体が異常行動を示すまでの過程を測定できる新規MAP感作モデルを確立した。3CSRTTと同じ実験箱に置いた後に課題の手がかりや報酬を一切与えない状態で行動を記録したとき、課題に従事してかつMAP感作を受けた個体のみが、報酬が与えられないのに課題を遂行するときと同じような行動を繰り返すようになることが明らかになった。MAP感作群のこの行動は、課題難易度が上昇していくにつれて徐々に強化された。過去の研究で、ヒトにおけるMAP感作が統合失調症とほぼ同一の症例を伴う精神病を高確率で引き起こすこと、マウス線条体においてドーパミンD2受容体の弁別機能障害を引き起こすことが分かっていた。したがって、MAP感作群における報酬によらない不合理な行動形成は、統合失調症の幻覚、妄想といった弁別障害を伴う陽性症状と共通した基盤を持つ病態であることが示唆された。これまでMAP感作モデルは運動量など量的な指標しか持たなかった。対して、本研究の新規感作モデルは、病態に質的に類似した異常行動を指標にでき、出現までの時系列に従って操作が加えられる点でより機序の解明に役立つ。 このモデルにおける病態の機序を明らかにするため、D2受容体拮抗薬スルピリドをMAPと同時に投与した結果、MAP感作群にみられた異常行動は抑制された。よって、D2受容体の異常行動関与が示唆された。また、前年度に確立したドーパミンセンサーGRABDAによる側坐核ドーパミン量測定を応用し、線条体などD2受容体の発現する広い領域におけるフォトメトリー測定系を確立した。上記の成果は次年度の日本神経科学学会大会で発表し、併せて論文化を進める。
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