2023 Fiscal Year Research-status Report
JNK阻害による抗炎症作用は歯周組織再生に関与するか?
Project/Area Number |
22K21065
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
兼子 大志 九州大学, 大学病院, 助教 (50962495)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
|
Keywords | 歯根膜幹細胞 / JNK阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
重度の歯周疾患において歯周外科療法は効果的な治療法として確立されているが、周囲組織に著しい傷害を伴う場合、治療の予後が悪くなることが問題点として 挙げられる。そのため、より予知性の高い歯周組織再生療法の開発が待望されている。 申請者は最近、JNK阻害剤が歯根膜幹細胞の骨芽細胞分化を促進し、また傷害による歯周組織欠損部の歯槽骨及び歯根膜の再生を促進することを報告した。しかしながら、その再生メカニズムは未だ明らかでない。 傷害部位の修復プロセスには炎症反応が深く関わっていること知られている。組織の生体応答に関与している細胞の一つとして、マクロファージがあげられる。マクロファージには炎症を惹起して感染異物を排除する1型マクロファージの他に、2型マクロファージが存在し、異物排除後の創傷治癒機転において成長因子や細胞外基質の生成や分解を調整する酵素を酸性することが知られている。 またJNKは酸化ストレスや機械的ストレスなどの炎症性刺激により活性化することが知られており、骨髄間葉系幹細胞では炎症性サイトカインの刺激によりJNKのリン酸化が促進されることが報告されている。さらに、2型マクロファージにおいて, JNKの活性化が1型マクロファージへの分化に関与していることも報告されている。しかしながら、JNKが歯周組織において炎症消退・組織再生にどのように関与しているかについては未だ報告がない。そこで申請者は、JJNK阻害による抗炎症反応に着目し、JNK阻害剤が歯周組織において抗炎症作用を有しているかについて検証を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット下顎骨頬側から下顎第一臼歯遠心根および第二臼歯近心頬側根の頬側に、歯根膜組織を含む歯槽骨欠損部をラウンドバーにて形成、JNK阻害剤を浸漬させ たアテロコラーゲンスポンジを填入した。コントロール群にはDMSOを用いた。その後、1, 3, 5, 7, 14日でラットを屠殺し下顎骨を摘出し、これらの切片を作製 後、組織学的解析を行った。これまでの結果では、JNK阻害剤群において骨修復及び歯根膜組織の修復を促進することがわかっていた。歯周組織傷害~再生の過程におけるマクロファージの発現動態解析のためM1マクロファージの分化マーカー(CD80)およびM2マクロファージの分化マーカー(CD206)について免疫組織化学染色法により解析を行った。その結果、JNK阻害剤群では、コントロール群と比較して傷害部位におけるCD86陽性細胞数は有意に減少し、一方でCD206陽性細胞数は有意に増加した。また、JNK阻害剤群では傷害部位近傍のIL-1bの発現が減少していることがわかった。次に、in vitroにおいてJNK阻害剤がヒト歯根膜細胞における炎症マーカーの発言に及ぼす影響について解析を行なった。その結果、IL-1bにて刺激したヒト歯根膜細胞は炎症マーカーであるIL-1b, IL-6及びIL-8の遺伝子発現が有意に増加した。一方で、JNK阻害剤は、IL-1bによって上昇した炎症マーカーの発現を有意に減少させた。シグナル解析でも同様に、L-1bにて刺激したヒト歯根膜細胞において、NF-kBのリン酸化は有意に促進したが、JNK阻害剤を添加すると、NF-kBのリン酸化は有意に抑制されることがわかった。 ここまでの内容について、2024年3月に行われた日本再生医療学会総会においてポスター発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、in vivoにおける歯周組織傷害~再生の過程を詳細に解析を行うため、それぞれのタイムポイントにおける解析を行う、継時的な変化について検討していく予定である。また、in vitroでは、歯根膜細胞だけでなく骨芽細胞においての炎症マーカーの発現に及ぼす影響や、JNK阻害剤のマクロファージの分化に対する直接的な影響についても解析が必要であると考えている。
|
Causes of Carryover |
免疫染色に使用した抗CD86抗体及び抗IL-1b抗体の購入やWestern Blottingに使用した抗p65抗体、抗p-p65抗体、抗AP1抗体などの購入を行なった。それに加え、学会発表を行なったため、旅費が必要であった。
|
Research Products
(1 results)