2022 Fiscal Year Research-status Report
唾液特異蛋白質ヒスタチン3を標的とするアプタマーを用いた新規唾液検査法の開発
Project/Area Number |
22K21192
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
山岸 孝幸 科学警察研究所, 法科学第一部, 研究員 (50960879)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ヒスタチン3 / アプタマー / HCR |
Outline of Annual Research Achievements |
犯罪捜査における従来の唾液検査法は、食品等にも含まれるアミラーゼを検出する手法であるため特異性が比較的低く、新規検査法の構築が必要とされる。唾液中に分泌される抗菌ペプチドの一種であるヒスタチン3は特異性の高い新規唾液マーカー候補である。しかし、既存の抗体を用いたヒスタチン3検出手法には、手技が煩雑であり、かつヒスタチン3自体が低分子であるため高い検出感度を実現可能な抗体が入手困難であるという課題がある。そこで、アプタマーと呼ばれる、比較的小さい標的分子にも特異的に結合する性質をもち高感度な検出手法への応用が期待できる、オリゴヌクレオチド(DNA)に着目した。本研究では、ヒスタチン3に特異的に結合するアプタマーを用いて、唾液中のヒスタチン3を簡便かつ高感度に検出する手法を構築し、従来法の課題を克服した新たな法科学的唾液検査法の開発を目指す。 初年度(2022年10月~2023年3月)は、蛍光標識したオリゴDNAを用いた常温下での自発的伸長反応(Hybridization Chain Reaction, HCR法)と蛍光検出器としてのリアルタイムPCR装置を用いた核酸検出系の構築を行った。検討の結果、枝分かれ構造を作るようにオリゴDNAを設計することで、より低濃度の核酸を検出することができることが分かった。この検出系は試料中に含まれる標的核酸(アプタマー等)の量を評価するために必要であり、系構築により、これにつづく配列改変アプタマー等によるヒスタチン3検出手法の構築に向けた検証作業の下準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初購入を予定していた試薬類の入手に想定より時間を要した。そこで、計画を一部変更して、蛍光HCR法による核酸検出系における測定条件の最適化および解析方法の検討を行い、後続の検証作業の基盤を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒスタチン3が結合した際に構造を変化するように配列を改変したアプタマーを新たに設計して、唾液試料中のヒスタチン3あるいはヒスタチン3標準品(合成ペプチド)を蛍光HCR法を介して検出可能か検証を行う。定量的にヒスタチン3(唾液)を検出できた系については、検出感度の評価を行い、また、法科学的な適用可能性を評価するために、唾液以外の体液あるいは食品等を対照として検査法の特異性を検証し、唾液検査法としての妥当性を評価する。
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Causes of Carryover |
比較的高額な物品(合成ヒスタチン3ペプチド等)を購入予定であったが、事務手続きに時間を要し当該年度中に入手できなかったため、研究計画の肝である標準ペプチドを用いた検証実験等に着手できず、研究計画全体に遅れが生じた。そのため、次年度において早急に当該物品を入手し、その他計画を含めて研究を遂行する必要がある。 ヒスタチン3検出系構築に向けた配列改変アプタマーによる検証実験のため、蛍光修飾DNA等の合成オリゴDNAおよび合成ペプチドを用いて実験を行う。アプタマーに様々な改変を加えて最適な検出系を模索する必要があるため、1回あたり合成オリゴDNA 14本および合成ペプチド約0.5mg分の検証を計10回行うための費用の使用を計画している。
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