2023 Fiscal Year Annual Research Report
認知症者における発話障害の評価と介入法に関する研究
Project/Area Number |
22K21233
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
太田 祥子 東北大学, 大学病院, 助教 (70963833)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 認知症 / 原発性進行性失語 / 発話障害 / 音声分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
非流暢/失文法型原発性進行性失語では、発語失行が中核的特徴の1つとして挙げられている。発語失行は、発声発語器官の運動障害に起因しない発話運動障害であり、音の歪みや分離、一貫性の乏しい音の誤りを特徴とする。臨床において、発語失行は聴覚印象による主観的な評価が中心であり、音響分析などの客観的な評価が行われることは少ない。本研究では、非流暢/失文法型原発性進行性失語の発話特徴について、適切に評価する方法を確立することを目的とした。 2023年度、非流暢/失文法型原発性進行性失語の研究参加者は14名となり、このうち縦断的評価を実施できた参加者は2名であった。コロナ禍の影響で入院病床が制限された状態が続き、当初の予定よりも研究参加者が少ないまま推移した。また、原発性進行性失語症患者と比較するために、健常高齢者の研究参加を募集し、10名の参加者を得た。データ解析について、聴覚印象による評価としては、Apraxia of Speech Rating Scale-3日本語版を用いて発話特徴を分析した。音響分析による評価としては、発話中の音圧波形と基本周波数の変化、および母音成分の持続時間とその分布に着目した解析を行った。聴覚印象による評価において、Apraxia of Speech Rating Scale-3日本語版の評価者間信頼性はそれほど高くないという結果であったが、音の歪みや分離などの有無を評価する上で1つの指標となる可能性が示唆された。音響分析による評価では、非流暢/失文法型原発性進行性失語症患者の発語失行あり群において健常高齢者群よりも音の渡りが変動しやすく、ピッチアクセントの変化が乏しいという結果が示された。音の歪みの指標については、明らかな有意差を認めなかった。音響分析における指標の有用性については、今後さらに症例数を増やして検討する必要がある。
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