2022 Fiscal Year Research-status Report
聴覚野から下丘へのフィードバックが音声認知に与える影響
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22K21238
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高橋 克匡 富山大学, 医学部, 研究員 (40965795)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | マウス / 超音波発声 / 下丘 / 聴覚野 / 音声認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,聴覚野から下丘への下行性投射が着目されるようになり,この神経路が音に対する反応のゲイン調節や音の間の短いギャップを検出することに重要であることが明らかになっている。音声は短いギャップで区切られた音素によって構成されていることから,これらの研究は,聴覚野から下丘への入力が,コミュニケーション音声の認知において重要な役割を果たしている可能性を提供している。しかし,この下丘への投射とコミュニケーション音声認知との関連を検証した研究はなく,認知に基づく行動への影響も不明である。果たして,聴覚野から下丘への投射は,音情報を「意味のあるもの」として認識し,行動するために必要なメカニズムなのだろうか。そこで本研究では,マウスを対象としたコミュニケーション音声の弁別課題を作成し,下行性投射特異的な神経活動制御によって神経活動にどのような変化が生じ,行動にどのような変化が生じるかを検証する。 本年度は,雄のマウスが,同じ雄のマウスの超音波発声(USV)を認識して行動が変化するような課題の構築と,光遺伝化学・遺伝化学的手法を使用して下丘を操作するために装置のセットアップを実施した。まず,USVを用いた行動課題に関して,Three chamber内で雄のマウスに対し,左右からUSVと純音をそれぞれ同時に提示したときに,行動の変化が観察された。次に,下丘への遺伝化学的操作はc-Fosの免疫染色を利用して細胞種特異的な操作が可能なことを確認した。また,光遺伝学的操作に関しては,自作のオプトロードを使用することで神経細胞集団が光刺激に反応していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
雄マウスが同系統の雄マウスのUSVに対して反応していることを示す行動データを得ることができたが,安定する結果を得るまでに時間を要した。また,行動実験の確立と並行して,下丘への細胞種特異的な神経活動の操作も確認できており,その後の実験に生かすことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
行動実験に用いた三種類の音(USV,ノイズ,純音)を雄マウスに聞かせ,マルチチャンネル電極を用いて下丘における電気生理記録を取る。そうして,個々の細胞のそれぞれの音に対する活動,つまり神経符号化を明らかにする。その後,聴覚野から下丘への投射を光遺伝学的手法を用いて特異的に抑制した状態で同様の記録を取り,その変化を観察する。最後に,この投射を遺伝化学的に抑制した上で,行動実験を行い,統制群と比較,解析する。
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Causes of Carryover |
実験に使用する備品を海外から購入したところ,受け取りが次年度になってしまったため。
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