2022 Fiscal Year Annual Research Report
Stoichiometric effects of leaf litters on aquatic secondary production via detritus/grazing chains
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21F30380
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
占部 城太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (50250163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HO PEI-CHI 東北大学, 生命科学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-07-28 – 2024-03-31
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Keywords | 湖沼生態系 / 栄養補償 / 落葉 / 細菌 / 原生動物 / 藻類 / 食物連鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
水生生物による落葉起源炭素の利用効率は極めて低く、湖と森のリンク機構には窒素やリンなど栄養塩供給も重要と考えられる。しかし、落葉に含まれるリンや窒素量は樹種により異なるものの、落葉樹種の違いが湖沼生態系にどのような影響を及ぼすか良くわかっていない。そこで、様々な樹種の落葉を栄養とエネルギー源としたマイクロコズム実験を行い、樹種の違いが水圏食物網にどのような影響を及ぼすかを調べた。実験は昨年と同様に行った。具体的には、ブナ、コナラ、スギ、コメツガの落葉を用い、その栄養塩・有機物溶出液を培養液としたマイクロコズム実験を行った。実験にあたっては、微生物シーズとして湖沼セジメントを少量加え、そこから発育した、藻類、独立栄養鞭毛藻、藍藻類、細菌、菌類、従属栄養鞭毛虫の細胞数の動態を追跡した。その結果、藻類はブナ、コナラ、スギによる培養液で良く増加したが、コメツガによる培養液での増殖率はきわめて低かった。また、コメツガやスギによる培養液では、独立栄養の鞭毛藻の増殖も低かった。しかし、コメツガによる培養では細菌の細胞数は低いものの、それを餌とする従属栄養鞭毛虫が他の培養液に比べて有意に増加した。さらに、微量元素 を加えると、コメツガによる培養液では菌類も増加した。このように、独立栄養生物(藻類、独立栄養鞭毛藻、藍藻類)と従属栄養生物(細菌、菌類、従属栄養鞭毛虫)の応答は、異なる樹種の培養液によって異なることが分かった。この他、細菌群集の組成をメタゲノムにより解析してその群集動態を調べるとともに、落葉溶出液に含まれる生元素や有機物組成の分析を行い、上記群集動態との関係を解析した。この他、落葉18樹種から溶出する溶存窒素、溶存リン、溶存有機体炭素の溶出効率とその化学量に関する論文を国際誌に投稿するとともに、これまで得られた成果を逐次英語論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により研究全体のスケージュールがやや遅れてしいたが、本年度にともなう取り返すことが出来、ほぼ予定どおりの実験を行うことが出来た。当初予定していた湖沼調査がコロナ禍のために十分に出来かかったが、実験に用いる微生物を採集することが出来、それらを用いたマイクロコズム実験を行うことが出来た。また、微生物のうち細菌についてはメタゲノム解析をおこなうなど、当初予定していたよりも詳細な実験と解析を行うことが出来た。それら結果は、今年度も日本生態学会大会にて口頭発表した。また、これまでの実験で得られた成果の一部は、国際誌に投稿し査読中であり、現在は他の2本の論文を準備している。これら成果は、一部解析を待って補充し、2023年前半に投稿する予定である。以上の成果から、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、2021年6月中旬より開始したため、2023年6月で終了となる。これまで、当初予定どおりの実験、研究が実施されており、すでに1報を国際誌に投稿した(査読中)。これに加え、2報の論文を執筆中であり、6月までに投稿予定である。帰国後も、えられた結果についての解析を引き続き行い、可能であれば4報目の執筆にも目処をつけたいと考えている。
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