2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KF0263
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
植村 玄輝 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (40727864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MASSA MANUELA 岡山大学, 社会文化科学学域, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | フッサール / 現象学 / 自然法 / 社会哲学 / ハイデガー / ヴィーコ / ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、エトムント・フッサールの法思想およびその背景をなす社会哲学について、主に三つの研究に取り組んだ。 第一に、フッサールが1923年から1924年にかけて日本の総合雑誌『改造』に寄稿した連続論文、通称「『改造』論文」を主な典拠として、フッサールの社会倫理学の内実を再構成する研究を行った。また、フッサールの社会倫理学が持つ特徴と意義を明らかにするために、マルティン・ハイデガーが「『改造』論文」でのフッサールの社会倫理学の試みをまったく評価していなかったという事情を取り上げ、倫理(学)に関する両者の考えの違いからそれを明らかにした。こうした研究の成果は2023年5月に岡山大学で開催された国際学会「Husserl's Ethics and Social Philosophy in Context」において発表され、同学会(およびそれとジョイントで開催されたルーヴァン(ベルギー王国)での学会)をもとにした論集企画に投稿される予定である。 第二に、フッサールの法思想をより広範な哲学史のなかで解釈し評価する研究に取り組んだ。具体的には、法と言語の関係について、フッサールとヴィーコそれぞれの立場を比較し、フッサールの法思想の意義を明らかにした。この研究の成果はすでに論文としてまとめられ、現在投稿中(査読中)である。 第三に、フッサールの社会哲学においても鍵を握るヨーロッパ論についての研究を行った。具体的には、フッサールに寄せられる定番の批判である「ヨーロッパ中心主義的である」という指摘について、そこで問題視されている事情の複雑さを明らかにすることを目指した。こうした研究においてもハイデガーとの比較というアプローチを取り、その成果をドイツハイデガー協会の学会でオンライン発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然法に関するフッサールの立場を再構成するという本研究のもっとも中心となる作業については、やや遅れが出ている。しかしこうした事情は、研究中断からの復帰にともなうさまざまな負担(岡山での生活を安定させるために時間と労力を要した、など)によるところが多い。 また、こうした事情にあって、ハイデガーに関する本研究員のこれまでの研究を活かしながら研究を進めるといういわばプランBを結果として採用したため、進捗それ自体は順調に生み出すことができている。 以上より、全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度も引き続き、研究成果を生み出し、すでに挙げられた成果と併せて発信することを目指す。 自然法に関するフッサールの立場を再構成するという研究について、本研究員は現在モノグラフを準備中である。本研究員はすでに関連するフッサールの一次資料の読解と分析を終えているが、上で述べた進捗の遅れは、この段階での作業に何らかの不備が残っていることを示唆している。 そのため本研究員と受け入れ研究者で、関連する一次資料についての検討を共同で行うことを考えている。具体的には、定例でミーティングを行い、本研究員のモノグラフの原稿を、そのつどの箇所で典拠とされているフッサールの一次資料と突き合わせながら検討する。 本研究員と受け入れ研究者はすでに、本研究員のフッサール「『改造』論文」に関する論文原稿を題材として同様のミーティングを行ってきている。そのため、こうした研究の実施にあたって大きな障害はないと考えられる。ただし本研究員は予定を急遽変更せざるをえないやむを得ない事情が生じやすい状況にあるため、定例のミーティングを延期することがこれまで少なくない回数あった。こうした問題に対処するため、来年度からは、定例ミーティングの頻度を「学期中は原則として二週間に一回」から「学期中は原則として毎週」に変更する。
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Causes of Carryover |
開催を計画していたワークショップが本年度中に開催することが困難であると判断されたため、そのための経費が未使用のままになった。当該ワークショップの開催を現在も検討中であるが、先行きは不明である。
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