2022 Fiscal Year Annual Research Report
Metal extraction using biocompatible ionic liquid system assisted by machine learning
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21F21350
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後藤 雅宏 九州大学, 工学研究院, 教授 (10211921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FAJAR ADROIT 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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Keywords | イオン液体 / 計算科学 / 溶媒抽出 / 金属分離 / レアメタル / 金属リサイクル / 機械学習 / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
レアメタルは現代の最新機器の重要な構成要素であるが、これらレアメタルの採掘可能な資源は限定的である。本研究では、機械学習(ML)を用いて、金属抽出に適したイオン液体(IL)を予測しました。金属選択性や環境毒性など、イオン液体の構造とその特性との間の隠れた関係を解明するために、Random Forestアルゴリズムに基づく分類と回帰モデルを提案しました。クロスバリデーションを用いたMLモデルの評価では、精度スコア(0.82)およびR2値(0.76)に示されるように、モデルの信頼性が高いことが示されました。また、ILの金属選択性はカチオンとアニオンの構造によって決まり、環境毒性レベルは主にカチオンの構造に大きく影響されることが明らかになった。そこで、学習済みモデルの予測に基づき、白金、リチウム、ネオジムに対する抽出選択性があり、かつ環境毒性が低いILを、当初提案した150種類のIL構造から3つ選びました。そして、実験室でその3つのILを合成し、標準的な溶媒抽出実験でその性能を評価しました。予測モデルから得られたPt選択性のIL、Nd選択性のILおよびLi選択性のILについて合成し、液液抽出試験によりその金属選択性を実験的に検証した結果、各イオン液体はモデルが提示したとおりのレアメタル選択性を示した。イオン液体の分子構造から金属選択性と毒性を推算する高精度スクリーニングの開発を達成できた。この実験から、MLから推奨されたILは、高い抽出効率(80%以上)でそれぞれのターゲット金属を選択的に抽出できることが示され、金属抽出のイノベーションを加速する有望な解析キットとしてMLの実現可能性が示されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、統計学的機械学習によるランダムフォレスト回帰法によりイオン液体の生体毒性の高精度予測モデルを構築した。しかしながら、実用的にはイオン液体の毒性だけでなく、金属選択性も同時に予測できることが望ましい。そこで本年度は、毒性が低く、かつ対象金属に抽出選択性を有するイオン液体をスクリーニングできる機械学習モデルの開発を試みた。 イオン液体の金属選択性分類モデルを作成し、交差検証、およびテストデータによる性能評価を実施した。金属選択性の分類モデルでは、交差検証によるモデル精度が0.82、学習に入っていないテストデータによる性能評価ではモデル精度0.91であった。したがって、イオン液体の分子構造から高い精度でPt/Li/Ndのどの金属に高い抽出能力を示すかを分類することが可能となった。また、毒性値の回帰モデルについては、交差検証、テストデータによる性能評価でいずれも線形相関係数R2=0.76、RMSE=0.58および0.63という値が得られ、実用上十分な予測性能を満たすモデルが開発できた。 得られたモデルを用いて、150個のイオン液体について金属選択性と毒性予測値を予測させた結果、金属選択性を示すDESはいずれも毒性値が比較的高いイオン液体であることが示されているが、これは水と分相可能とするための疎水性に由来する毒性が発揮される結果であると考えられる。予測モデルから得られたPt選択性のIL_51、Nd選択性のIL_53、およびLi選択性のIL_87について、実際に合成し、液液抽出試験によりその金属選択性を実験的に検証した。その結果、各イオン液体はモデルが提示したとおりのレアメタル選択性を示した。イオン液体の分子構造から金属選択性と毒性を推算する高精度スクリーニングの開発を達成できた。 以上のように、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、イオン液体(IL)に代わる環境調和型溶媒として、深部共晶溶媒(DES)が注目されています。DESとILは物理的・化学的性質が似ていますが、その性質は大きく異なります。ILが新規化合物であるのに対し、DESは2種類以上の化合物、特に水素結合供与体(HBD)と水素結合受容体(HBA)の混合物である。この混合物は、構造、組み合わせ、組成が様々であるため、既存のDESの可能性は実質的に無限にあります。そのため、この広大な化学空間に対応するため機械学習(ML)技術を採用することは、非常に有用であると考えられます。本研究では、最も基本的な特性である共晶曲線から、DESの特性を推定するMLツールを提供することを今後の(現在進行中の)研究の焦点としています。DESの共晶特性は、固液平衡(SLE)相図を使って推定することができます。現在、私は熱力学的原理とMLアルゴリズムを組み合わせて、SLE相図の形状を予測するMLモデルを作成しています。ランダムフォレスト、エクストリームグラディエントブースティング、人工ニューラルネットワークの3つのアルゴリズムを使用します。予備的な結果では、モデルは融合エンタルピー(ΔfusH)や融解温度(Tm)といったDES成分の物理特性を正確に推定できることが示されました。MLの予測値をSLE方程式の入力として使用し、プログラミング言語(Python)でこのプロセスを複数回繰り返すことで、1000個のSLE相図の形状を推定することができます。今後は、MLモデルによって発見できる環境調和型溶媒の数を増やしていく予定です。
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Research Products
(6 results)