2022 Fiscal Year Annual Research Report
Improvement of visual and motor functions in patients with amblyopia after binocular training
Project/Area Number |
22F21741
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanagawa University |
Host Researcher |
前原 吾朗 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (90401934)
|
Foreign Research Fellow |
BRIN TAYLOR 神奈川大学, 人間科学部, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 視覚 / 弱視 / 輝度コントラスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、片眼弱視患者の視力と立体視力を向上させる新たな両眼視訓練法を開発することであった。新しい訓練法において、弱視患者は両眼開放した状態で弱視眼に呈示された刺激を検出した。このとき健眼にも刺激が呈示されるが、健眼に呈示される刺激の輝度コントラストには低コントラストから高コントラストまで4つの段階があった。弱視眼に呈示された刺激の輝度コントラスト閾を計測し、訓練によって閾値がどのように変化するかを検討した。また、訓練の前後において視力、立体視力、視覚運動協応のテストを行い、これらの計測値における訓練効果についても調査した。両眼統合を訓練する手法は以前にも提案されているが、本研究で用いた手法は左右眼に同じ形状のパターンを提示しているために視野闘争が起こりにくいという利点がある。 本研究の特色として、交代視を伴う片眼弱視患者を対象に実験を行った点があげられる。通常、片眼弱視患者は交代視をせず一方の眼のみを使用しているが、不同視が原因の弱視患者の場合には交代視も持つことがある。本実験において、交代視のない患者の弱視眼における閾値は健常者よりも高かった。一方、交代視を伴う片眼弱視患者の閾値は健常者よりも低くなっていた。これは、健眼に提示された刺激を無視することができるためであると考えられる。しかし、この閾値低下は訓練が進むと減少し、健常者の閾値に近くなっていった。訓練前においては一方の眼のみを使用していたのに対し、訓練後には左右両方の眼を使用するようになったため、閾値が上昇して健常者の値に近くなったと思われる。交代視を伴う片眼弱視患者2名のうち1名は弱視眼における視力と立体視力が向上した。こうした結果から、左右眼を刺激した状態での弱視眼における刺激検出を訓練することによって、交代視を伴う弱視患者において両眼統合が改善されることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年3月までに、健常者を対象としたコントロール実験と交代視を伴う弱視患者を対象とした本実験とを行った。健眼に提示された刺激の輝度コントラストが高いとき、健常者よりも弱視患者の方が閾値が低かった。この結果は、弱視患者の輝度コントラスト閾を計測した先行研究の結果とは異なる。これは本実験に参加した弱視患者が交代視を行っていたためであると思われる。彼らは抑制される眼を自身の意思で切り替えることができるので、健眼に提示された刺激を無視することができたのであろう。しかし、訓練を続けると閾値が徐々に上昇し、健常者の閾値に近づいていった。このことは、一方の眼のみを使っていた弱視患者が両眼を使うようになっていったことを示唆している。しかし、この時点では交代視を伴う弱視患者のみを計測しており、交代視を伴う弱視患者の計測が必要であった。 また、外部機関(他大の大学病院)において弱視患者の計測することを計画していたが、新型コロナウイルスの流行のため、外部機関で実験を行うことができなかった。そのため、実験に参加できる弱視患者の募集が困難になり、研究の進捗を遅らせることになった。そのため、2022年度の科学研究費補助金の一部を2023年度に繰り越すこととなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年3月の時点では、交代視を伴わない弱視患者のデータが未取得であった。交代視を持つ弱視患者が通常の弱視患者とは異なる結果を示すことを明確にするため、2024年度に交代視を伴わない弱視患者の計測を行った。彼らの閾値は健常者の閾値よりも高く、先行研究において報告された結果と類似していた。 片眼弱視患者の両眼視を訓練する手法を検討した研究を多くあり、ほとんどの研究が視力向上などにおける一定の効果を報告している。一方、両眼視訓練の臨床試験では十分な効果が観察されていない。こうした研究と臨床試験における結果の違いは、研究においては訓練手法を患者に合わせて細かく調整しているためでないかと言われている。交代視を伴う弱視患者は稀であるが、交代視の有無が考慮されていないことが臨床試験に影響していた可能性がある。交代視を持つ患者の両眼統合を訓練することができれば、その他の両眼視訓練の効果も向上するかもしれない。この点は今後の検討課題である。 本研究の成果は、2023年度に日本視覚学会2023年夏季大会と Asia-Pacific Academy of Ophthalmology の第39回大会において本研究の発表を行った。また、2024年に入り、研究成果をまとめた論文を国際論文誌に投稿し、査読中である。今後は査読者からのコメントに対応して、論文の公表を目指す。 新型コロナウイルスの流行のため、本研究課題においては弱視患者の測定を外部機関で行うことができなかった。より多くの弱視患者のデータを集めるため、外部機関との共同研究体制を再構築する必要がある。
|