2023 Fiscal Year Annual Research Report
流体力学計算に基づく高感度溶液分析法の次世代金属材料腐食反応精密解析への適用
Project/Area Number |
22KJ0014
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤村 諒大 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 金属腐食 / 不働態 / 鉄鋼材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気化学測定装置と誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を組み合わせた高感度溶液分析法を用いてFe-Cr材料表面で腐食反応や不働態皮膜の形成時の電極反応の物質収支をその場定量した。その結果、不働態皮膜が形成する直前の金属/水溶液の界面には腐食生成物の濃縮した濃厚層が形成することを明らかにした。濃厚層の内部では酸化生成物がアクア錯体として配位水を取り込むため、自由な水の濃度は著しく減少しており、腐食生成物の安定性に関与して不働態皮膜の形成する反応が誘発されることを提案した。 また鉄鋼材料/水溶液の界面で腐食反応が進行した時のICP-OESから得られる溶液元素分析結果と反応の不均一性の相関を数値シミュレーションを用いて解析した。純鉄を含むFe-Cr合金を電気化学測定した時の電流-電位曲線と溶液元素分析結果を再現するような腐食反応を数値計算して、合金組成に依存した不均一な電極反応の数理モデルを構築することに成功した。 さらにFe-Cr-AlあるいはFe-Cr-Siなどの三元系の鉄鋼材料を用いて腐食反応の物質収支と材料の不働態に与える添加Al/Siの役割を検討した。硫酸水溶液中のFe-Cr-Al表面で腐食反応が進行すると、FeおよびCrの酸化生成物に加えてAlの酸化生成物としてアクア錯体が生成し、濃厚層形成と濃厚層内の自由水を減少させることで不働態皮膜の形成に貢献することを示した。一方、硫酸水溶液中のFe-Cr-Si合金ではSi酸化物が鋼材/濃厚層の界面に形成し、FeやCrの酸化生成物の物質輸送過程を支配することで不働態皮膜の形成と耐食性の向上に関与することを明らかにした。鉄鋼材料に添加する元素によって鋼材/水溶液界面で起こる不働態化過程への化学的な関与が異なることを高感度溶液分析手法を用いた元素分析結果の観点から示した。得られた一連の成果を学術論文にまとめた。
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