2022 Fiscal Year Annual Research Report
精神疾患におけるアストロサイトのアドレナリン受容体の機能
Project/Area Number |
21J20879
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森本 康平 北海道大学, 大学院獣医学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 神経炎症 / ニューロン / グリア細胞 / リポ多糖 / 記憶障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症、歯周病、腸炎など末梢において炎症が生じる疾患では、中枢神経系疾患や精神疾患を併発するリスクが高いことが知られている。末梢の炎症を引き起こすモデルとして、マウスにリポ多糖(LPS)を腹腔内投与するモデルが多くの研究で用いられてきた。LPS投与マウスでは、抑うつ行動や認知機能障害がみられ、ニューロン変性やグリア細胞の活性化が生じることが報告されている。一方で、LPS投与が神経炎症や脳機能を損なうメカニズムについては、不明点が多い。そのため、本研究ではLPS投与による神経炎症の病態機構を組織・分子的な観点から明らかにすることを目的とする。 2022年度の研究により、LPS投与後の病態として以下の点が明らかとなった。LPS投与24時間後の血漿および全脳サンプルを用いてLALテストを行ったところ、LPS活性の増加がみられた。また、LPS投与3日後にミクログリア特異的貪食マーカーCD68の蛍光強度が増加し、7日後にニューロン活性化マーカーc-Fos陽性細胞の密度が減少した。一方で、ニューロン特異的マーカーNeuN陽性細胞の密度や、Fluoro-Jade Cを用いた変性ニューロンの蛍光染色では、変化が見られなかった。上記および2021年度までの結果をあわせ、LPS投与後の短期記憶障害のメカニズムとして、活性化したミクログリアが樹状突起スパインを貪食し、シナプス強度を低下させ、ニューロンの活性化を抑制した可能性が示唆された。また、LPS投与後にグリア細胞が活性化する原因として、LPSの脳内浸潤が考えられるため、今後検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はLPS投与後の組織・分子的な病態評価として、脳実質のLPS活性、ミクログリアによる貪食、ニューロンの活性などについて経時的な変化を検出することができた。2021年度までの結果と合わせ、LPS投与後の短期記憶障害のメカニズムとして示唆に富む結果が得られた。一方で当初計画していた、病態の原因となる細胞種の特定を目的とする、グリア細胞の活性化抑制薬の投与は行うことができなかったため、当区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
C57BL/6NマウスにLPSを投与すると、短期記憶障害が生じ、未熟な樹状突起スパインの増加やニューロン活性化抑制、グリア細胞の活性化が生じることを2022年度までに明らかにした。2023年度は、グリア細胞の活性化が病態に関与するか検討するため、アストロサイト活性化抑制薬のフルオロクエン酸やミクログリア消失薬のPLX5622を投与した後、LPSを投与し行動試験や病態評価を行う。また、LPS投与後にグリア細胞が活性化する原因を明らかにするため、血中の炎症因子やLPSの活性中心であるLipid Aに着目して、血漿移植実験を行う。 また、2023年度は本研究課題の最終年度であるため、得られた研究結果を学術誌や学術集会等において公表する予定である。
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