2022 Fiscal Year Annual Research Report
隕石に含まれる始原的物質の希ガスイメージングによる原始太陽活動の研究
Project/Area Number |
21J21219
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 壮平 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 宇宙化学 / 地球化学 / 初期太陽系 / コンドライト / 希ガス / 太陽風 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽風のエネルギー分布やフラックスは,太陽の活動度を反映する。太陽風希ガスを豊富に含む隕石(ガスリッチ隕石)は,母天体の表層で太陽系形成初期に太陽風照射された物質を多く含んでいる。ガスリッチ隕石中の太陽風起源希ガスを含む鉱物を特定し,その鉱物内の太陽風希ガス分布を解明することで,太陽系形成初期の太陽活動を推定できる可能性がある。これまでに,本研究では同位体ナノスコープを改造し,ヘリウムの広領域イメージングシステムを構築した。構築した広領域イメージングシステムを用いて,ガスリッチ炭素質隕石のひとつ,Northwest Africa 801隕石中の太陽風ヘリウム分布を観察した。イメージングの結果,太陽風ヘリウムはコンドリュール内やコンドリュールのリムからは検出されず,隕石のマトリクス部分から検出された。マトリクスは,太陽風ヘリウムが検出されない塊状の部分の間隙を,太陽風ヘリウムが検出される部分が埋めるような構造を示した。これは,隕石母天体上で,太陽風に曝された表層の砂が,地下の固結したレキ状の物質の間に入り込んだことを示している。ガスリッチ隕石の広領域ヘリウムイメージングによって,隕石母天体の堆積構造を可視化できた。また,太陽風ヘリウムが隕石マトリクス中の金属鉄・硫化鉄・水酸化鉄粒子に特に濃集していることを突き止めた。ヘリウムが濃集している各粒子へ超高空間分解能でのヘリウムイメージングを行うことで,鉱物のリム部分にヘリウムが濃集していることを発見し,鉱物粒子に含まれるヘリウムが母天体での太陽風打ち込みに由来することを明らかにした。これらの研究成果について,2022年5月,8月,2023年2月に開催された国際学会(日本,イギリス)と2022年9月,2023年3月に開催された国内学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い,前年度までに構築した広領域イメージングシステムを用いて,太陽風希ガスを豊富に含む隕石のひとつ,Northwest Africa 801隕石中の太陽風ヘリウム分布を観察した。広領域イメージングの結果,隕石のマトリクス部の太陽風ヘリウム分布から,隕石母天体での堆積構造を可視化することに成功した。また,太陽風ヘリウムが濃集している鉱物を特定した。さらに,超高空間分解能のヘリウムイメージングによって,鉱物粒子内の太陽風ヘリウム濃度分布を明らかにすることができた。太陽系形成初期の太陽風のエネルギー分布と照射量を見積もることができるデータを取得することができており,進捗状況はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
同位体ナノスコープを用いて,太陽風ヘリウムを保持する複数の鉱物粒子への超高空間分解能ヘリウムイメージングを進め,複数の鉱物粒子から太陽風ヘリウム濃度分布のデータセットを取得する。取得したデータから,母天体上での太陽風照射量の導出と太陽風エネルギー分布の再現を行い,太陽系形成初期の太陽活動を推定する。
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Research Products
(5 results)