2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J40020
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 彩 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 河川微生物 / 有機物分解 / バイオフィルム / 菌類 / 空間的変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物による有機物分解と栄養塩の利用は、河川の物質循環を駆動する重要な要素である。動的な環境である河川において、最も安定で活発な微生物活動の場は、河床に発達するバイオフィルムである。しかし、生態系のなかで物質循環に関わる重要な機能を、どの生物が果たしているのかという点は未だ不明瞭であり、その解明が重要な課題となっている。バイオフィルム内には藻類や細菌類に加えて、機能未知の菌類が存在する。本研究では、微細な形態となった有機物の分解に寄与すると予想される、無機基質付着性の菌類群集の種組成が河川内でどのように変化しているか明らかにするとともに、それに対して「供給される有機物の組成」と「生物間相互作用」が及ぼす影響の解明を目指している。 当該年度は秋季、北海道忠別川流域に自生する微生物群集を調べるため、落葉ディスク、テラコッタタイル、細礫(地下5 ㎝および20 cm)を1ヶ月間、野外で培養した。採取した水試料からは1 mm以下の有機物の質と量を、安定同位体比分析や三次元蛍光分析などを用いて調べた。結果、水中に存在していた微細な有機物の質や量は、空間的(水平方向、鉛直方向とも)に大きく変化していた。よって、微生物マットに供給される有機物の質や量は、河川勾配や集水域の違いのみでなく、付着基質が存在する水深によっても大きく異なることを示すことができた。河川においてこのような、微細な有機物の質的な違いと微生物との相互関係を調べた研究は少ない。次年度以降は、これらの結果を微生物バイオマスや種組成の挙動と照らし合わせることで、菌類の生態や、それらが担う生態系機能を理解するための意義深い考察が得られると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、調査地の選定と野外培養実験、水試料分析についてのすべてを完了でき、良好な結果も得られた。また、2年目以降に取り組む予定の、遺伝子関連の解析環境のセットアップも終えることができた。DNAバーコーディングは、完了まで至ることはできなかったが、分析に用いるライブラリの調整は順調に進んでいる。以上のことを加味して、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
MiSeqを使用したDNAバーコーディングを完了し、微生物群集構造の解析に着手する。また、菌類の種組成のデータを用いて「供給される有機物の組成」との関係を評価するとともに、ネットワーク解析を用いて微生物群集内における生物間相互作用を明らかにする。後期からは、「原生生物による菌類の捕食」を検証する実験のための準備を開始する予定である。
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