2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J40020
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 彩 北海道大学, 統合環境科学部門 自然環境保全分野, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 菌類 / 河川生態系 / 有機物分解 / 河川内分布 / バイオフィルム / 生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、河川生態系における無機基質付着性の菌類群集構造の空間的な変化を明らかにするとともに、それに対して「河川水中の有機物の組成」と「生物間相互作用」が及ぼす影響の解明を目指している。有機物組成の変化に応答する系統群を同定することで、菌類を水質変化の生物指標として活用する具体的な指針を得られることが期待される。 当該年度は、野外培養実験により得られた微生物DNAの定量PCR法による測定と、Mi-seqによるメタバーコーディング解析のためのライブラリ調整、および配列解読を実施した。得られた配列データはQIIME2を使用して解析を行い、バイオフィルムに含まれる菌類、細菌類、真核生物全般の群集構造と系統的位置を明らかにした。結果、菌類の群集構造は流域間や水深間の水中有機物の質的・量的な変化とともに、異なる組成に変化していることが明らかになった。また、バイオフィルムが付着する基質サイズによっても、群集構造が異なることが示された。現在は、有機物の質的・量的な変化が菌類群集構造の空間的な変化に及ぼす影響の大きさを調べるため、冗長性分析を行っている。また、細菌類、真核生物との「生物間相互作用」を明らかにするためのネットワーク解析を実施し、順調に進捗している。次年度は得られた結果を複合的に照らし合わせることで、菌類の生態や、それらが担う生態系機能を理解するための意義深い考察が得られると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施を予定していた定量PCR法によるDNAの定量と、Mi-seqを使った菌類、細菌類、真核生物の配列解読はすべて完了した。得られた配列データについて、QIIME2を使用してアンプリコンシーケンスデータ解析を行った後、ASV法により代表配列を決定し、相同性検索を実施して群集構造を明らかにした。菌類、細菌類、真核生物の群集構造データは、多様性解析、群集組成解析、代謝パスウェイの推定、ネットワーク解析(WGCNA法)といった多岐のアプローチにより、「河川内分布」、「基質特異性」、「生物間相互作用」を明らかにしている最中であり、順調に進捗している。本年度は原生生物が菌類に及ぼす捕食圧を調べるための培養実験も実施する予定であったが、研究を進めるにつれ、まずは自然状況における2者の生物間相互作用を適切に理解するべきであると考え、ネットワーク解析の実施を優先している。よって、おおむね計画通り進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はバイオフィルム内の群集構造や生物間相互作用を明らかにするための解析を継続する。特に「菌類群集と有機化合物組成についての冗長性分析」、「ネットワーク解析による生物間相互作用の推定」は本計画の根幹となる成果であるため、内容についてさらに精査する。ネットワーク解析の結果がまとまり次第、原生生物と菌類を対象とした摂食実験について再度検討する。また、国際誌への成果の公表を見据え、現在までに得られたデータを論文として取りまとめる予定である。
|