2022 Fiscal Year Annual Research Report
The role of microclimate for conservation under climate change: evaluating the importance of local-scale factors in comparison with broad-scale factors
Project/Area Number |
22J10191
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
崎山 智樹 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 気候変動 / ナキウサギ / 分布 / 微気候 / 小型哺乳類 / 森林 / 高山 / 岩塊地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、気候変動下の生物の存続における微気候の重要性を評価することを目的とする。岩塊堆積地に生息するエゾナキウサギを研究対象とし、岩塊間の空隙に存在する微気候が本種の分布と遺伝構造に与える影響を、外気温や土地利用など他の環境要因と比較し明らかにする。 初年度となる2022年度は、エゾナキウサギの分布調査を6月から10月にかけて実施した。調査は北海道の大雪山国立公園とその周辺山域における岩塊堆積地37地点(標高:300-2200m)で実施し、生息の有無はプレイバック法を用いて調べた。各地点で外気温と岩塊間の温度(微気候)を観測するために、温度ロガーを設置した。エゾナキウサギは寒冷適応種であるため夏季の温度データに着目した結果、ほぼ全ての地点で岩塊間の平均温度は外気温よりも0-3℃低く、低標高域にはさらに低い地点が複数存在した(例:外気温は18℃でも岩塊間は2-10℃)。しかし、分布全域での要因解析では、本種の生息には微気候ではなく外気温が強く影響することが確認された。外気温は負の影響を示したため、本種の主要分布域は広域的に存在する寒冷環境で説明されると考えられる。一方で、分布周縁部、すなわち低標高域の生息においては、微気候の存在が生息に重要であるかもしれないため、引き続き解析を行う。 また、本年度は遺伝解析に向けて、マイクロサテライトDNAマーカーを用いたPCRの条件検討を実施した。最初に本種の遺伝試料として最も採取効率の高い糞を用いたが、ほとんどのプライマーで増幅が確認されなかった。この原因として糞が不純物を多く含むことが考えられたため、より条件検討に適した試料を用いるために捕獲調査を実施し筋肉試料を採取した。その後、筋肉と糞の試料を用いることでPCR条件の検討を進めた結果、新鮮な糞であればマイクロサテライトDNAの分析ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はエゾナキウサギの分布調査と生息地内の温度環境の観測を多地点で行うことを計画していたが、これらの調査を当該年度に実施することができた。遺伝分析の準備においては、当初の糞試料のみを用いた際には条件検討が進まなかった。しかし、すぐに捕獲調査に取り掛かり、良質な筋肉試料を採取することができたため、当初予定していた遺伝分析の条件検討を遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
エゾナキウサギの分布周縁部、すなわち低標高域の生息における生息を規定する要因を、微気候と土地利用の影響に着目し解析を行う。本解析は8月までに終え、その後には論文化を進めていく。遺伝分析においては、多地点で採取した糞試料のジェノタイピングを進め、集団遺伝解析を実施する。得られた結果を学会等で発表し、論文にまとめあげる。
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