2022 Fiscal Year Annual Research Report
α-Defensinの共生制御が担う腸を起点とする粘膜免疫ネットワーク
Project/Area Number |
22J10521
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大平 修也 北海道大学, 先端生命科学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | α-defensin / Paneth細胞 / 腸内細菌叢 / 粘膜免疫 / 非感染性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌叢は代謝物などを介して、宿主の自然免疫および獲得免疫を制御することで健康に貢献することが知られている。腸内細菌叢の制御因子として、外界から取り入れられる食のほかに、宿主に由来する免疫グロブリンや抗菌ペプチドなどが報告されている。小腸上皮細胞の一系統であるPaneth細胞は抗菌ペプチドα-defensinを分泌することで、病原菌を排除する自然免疫を担う。さらに、α-defensinのin vitroでの非共生菌に対する選択的殺菌活性に関する研究や、α-defensinの活性低下モデルおよび食などによるα-defensin分泌低下モデルを使用したin vivoの研究から、α-defensinが腸内細菌叢を制御することが示されてきた。しかし、α-defensinがどのような腸内細菌を選択することで、免疫をどのように制御し、宿主の健康維持に貢献するのかは未だ全く不明である。したがって本研究は、α-defensin低下モデルマウスを用いて、α-defensinを起点とした腸内細菌叢の制御による免疫を介した生体恒常性維持メカニズムを明らかにすることを目的とする。令和4年度はメタゲノム解析からα-defensinが腸内細菌叢を制御することを初めて明らかにした。さらに、腸管関連リンパ組織の組織学的および免疫学的解析から、α-defensinが腸内細菌叢を介して腸管粘膜免疫を制御することを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体の目的であるPaneth細胞α-defensinによる腸内細菌叢制御から免疫を介して健康維持に至るメカニズム解明のうち、令和4年度はα-defensinが腸内細菌叢をどのように制御するのかを明らかにした。α-Defensin低下モデルマウス由来の便を用いてショットガンメタゲノム解析を実施したところ、コントロールと比べて腸内細菌叢のβ多様性に有意な変動を認めた。さらに、属レベルで複数の菌に関して、2群間で占有率に差が見られた。これらのことから、α-defensinが腸内細菌叢を制御することを初めて明らかにした。 また、α-defensinによって規定される腸内細菌叢がどのように粘膜免疫を制御するのかを探索した。腸管粘膜免疫を担う腸管関連リンパ組織である腸間膜リンパ節 (MLN)、パイエル板 (PP)、小腸粘膜固有層および大腸粘膜固有層の組織学的解析および免疫細胞のフローサイトメトリー解析を実施した。すると、α-defensin低下モデルマウスでMLNの重量増加、MLN、PPおよび小腸粘膜固有層の細胞数増加とhelper T cell subsetにおける比率の変動を認めた。これらのことから、α-defensinが腸管粘膜免疫の恒常性を維持し、特にhelper T cell subsetの分化を制御することを明らかにした。さらに、無菌化したα-defensin低下モデルマウスにおけるMLNの重量が、無菌化したコントロールマウスと変わらなかったことから、α-defensinが腸内細菌叢を介して腸管粘膜免疫を制御することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、α-defensinが腸内細菌叢の機能をどのように制御するのかを明らかにするために、ショットガンメタゲノム解析による機能遺伝子の探索と、キャピラリー電気泳動-質量分析によるメタボローム解析を計画している。さらに、腸管粘膜免疫への影響に関して、腸管透過性の評価、小腸と大腸におけるサイトカインのマルチプレックス解析とRNAシーケンス解析を行い、全身性免疫への影響に関して、血清中サイトカインのマルチプレックス解析や脾臓のフローサイトメトリー解析を行う。これらにより、α-defensinが制御する腸内細菌叢が腸管粘膜免疫および全身性免疫を分子レベルでどのように制御するのかを明らかにする。加えて、α-defensinによる腸内細菌叢を介した免疫制御が健康維持にどのように寄与するのかを明らかにするために、高脂肪食誘導性Ⅱ型糖尿病モデルや化学物質誘発性大腸炎モデルをα-defensin低下マウスに適用することで非感染性疾患の感受性を評価する予定である。
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Research Products
(5 results)