2023 Fiscal Year Research-status Report
牛の子宮内サイトカインネットワークを調節する精漿中オステオポンチンの機能解析
Project/Area Number |
22KJ0112
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷田 孝志 北海道大学, 獣医学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 乳牛 / 不妊 / リピートブリーダー / 子宮 / 低受胎 / オステオポンチン / 治療 / 腟 |
Outline of Annual Research Achievements |
発情時に腟内投与されたオステオポンチン(OPN)が、乳用種リピートブリーダー牛の子宮内膜上皮成長因子(EGF)濃度異常を正常化し、受胎性を改善させる機序の一端を明らかにするため、以下の研究を行った。 1.本作用におけるOPNの活性部位の決定を試みた。OPNはトロンビンによって切断され、N末端断片はRGDおよびSVAYGLKモチーフを介してインテグリンに、C末端断片はCD44に結合する。昨年度は、GRGDSVAYGLKペプチド(ペプチドA)とSVAYGLKペプチド(ペプチドB)にはEGF正常化効果が認められるが、GRGDSペプチドに効果は認められないこと、ペプチドAはペプチドBよりも少用量で効果が発現することを明らかにした。本年度はトロンビン切断型OPNのNおよびC末端断片をリピートブリーダー牛に投与した。その結果、N末端断片にEGF濃度向上効果を認めた。また、GRGESVAYGLKペプチドの治療効果を判定したところEGF正常化効果は認められなかった。以上より、子宮内膜EGF濃度異常を正常化するOPNの活性部位はSVAYGLKモチーフであり、RGDモチーフはSVAYGLKモチーフを介した本作用の活性増強に関わる可能性が示唆された。 2.OPNは腟における免疫細胞の活性化を介して子宮に炎症性反応を誘起し、子宮内膜EGF濃度異常を正常化させるという仮説を検証するため、実験を行った。 ①ペプチドAまたはPBSを腟内投与し、腟および子宮における多形核白血球出現率(PMN%)の変化を調べた。その結果、本ペプチドは腟におけるPMN%を有意に上昇させ、子宮におけるPMN%を上昇させる傾向が認められた。 ②ペプチドAを発情時のPBMCに培養下で作用させた。その結果、処理群は無処理群と比べて、一部の炎症性サイトカイン遺伝子の発現量が高値を示した。また、PBMCにはOPN受容体遺伝子の発現が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初設定した2つの項目について、当初の想定以上に進展していると判断する。 1.子宮機能を調節するOPNの活性部位の決定:昨年度および本年度の研究から、当初目標としていた活性部位をペプチド単位(SVAYGLK)で決定することができた。さらに、本モチーフによるEGF濃度正常化作用の活性増強に関わる部位(RGD)も決定することができた。本活性部位を含む組成物、および当該組成物を用いて受胎性を向上させる方法については、特許申請を実施済であり、当初の想定以上に研究は進展したと判断する。 2.活性部位を含む断片型OPNが腟と子宮における多形核白血球浸潤、および末梢血単核球、腟と子宮のサイトカイン発現に及ぼす影響:当初の計画通り、生体に断片型OPN(GRGDSVAYGLKペプチド)を投与し、本ペプチドが腟と子宮において炎症性反応を誘起する可能性があることを示唆する結果を得ることができた。また現在、生体投与試験から得られた末梢血単核球、腟および子宮材料について、サイトカイン遺伝子発現量の測定および解析に着手している。さらに、来年度に実施予定であった、末梢血単核球を用いた培養試験も前倒しで実施することができており、おおむね当初の想定以上に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、PBMCと腟組織との共培養を用いた試験を中心に実施したい。当初はPBMCと腟上皮細胞との共培養を計画していたが、発情周期でPBMCと腟の機能が変化する可能性があること、同一生体由来かつ同時に採取したPBMCと腟材料の使用が共培養の条件として望ましいこと、生体から材料を採取し腟上皮細胞を単離・培養することの困難さ等の観点を考慮した結果、生体から腟組織を生検して採取し、PBMCと共培養する方法に変更し、実験を試みる。腟組織のバイオプシーおよび培養方法については、本年度に検討を実施している。また、本年度に実施した生体投与試験および培養細胞を用いた試験から得られたサンプルについて、サイトカイン遺伝子発現量の測定および評価を実施し、生体内外の結果を比較する。
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Causes of Carryover |
残額は少額のため、実験に必要な試薬等の購入に充てることができなかった。次年度の予算と併せて試薬等の購入に充てる。
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