2022 Fiscal Year Annual Research Report
NHC金属錯体を用いた固体内分子ギア運動の合理的設計と発光物性
Project/Area Number |
22J20934
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安藤 廉平 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 有機金属錯体 / 有機結晶 / 結晶性分子ローター |
Outline of Annual Research Achievements |
NHC 銅(I)錯体を用いた分子間ギア運動のエントロピー効果を固体内で制御: 予備成果として化合物がすでに得られていた連動部位の数の異なる分子の詳細な回転挙動を固体NMR測定を用いて明らかにした。固体NMR測定の結果、当初の予想通り回転部位が増えることで、連動運動におけるエントロピー変化が確認できた。 NHC金(I)錯体を用いた巨大な回転部位を有する分子ローターの合成: 本研究の目的の1つは、「大きな分子骨格をローター部位とした結晶中における連動運動の実現」である。一般的に分子骨格が大きくなるほど、結晶内での相互作用も大きくなる傾向にあるため、大きな分子骨格をローターとした結晶性分子ローターの実現自体が困難な課題となっている。本年度はこの課題を解決すべくN-ヘテロ環状カルベン(NHC)金属錯体を用いて従来のローター部位よりも大きな骨格を有する結晶性分子ローターの開発を行った。立体的に嵩高いNHC金(I)錯体を用いることで、これまで報告されたなかで最も回転半径が大きく、分子サイズの大きなトリプチセン骨格と、それを上回るペンチプチセン骨格をローター部位とした2核錯体の合成、また結晶中における回転運動の調査を行った。単結晶X線構造解析の結果から当初の目論見通り、嵩高いNHC配位子によって、いずれの分子も結晶中においてローター部位周辺が立体的に空いたパッキングをとっていることが明らかとなった。また、固体NMR測定の結果から両分子とも結晶中で分子回転を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では「NHC 金属錯体を用いたヘキサアリールベンゼンの分子内ギア運動の制御と固体発光(令和4年度予定)」であったが、化合物合成の初期段階で難航しており、予想したほどの進展は得られなかった。一方で、次年度の計画予定であった「NHC 金属錯体を用いた分子間ギア運動のエントロピー効果を固体内で制御(令和5年度予定)」については、当初予想した通りの結果が得られており、予想以上の進捗が得られた。また、「非対称な NHC 金属錯体を用いたトリプチセンの分子間ギア運動の実現(令和6年度予定)」の前段階としてNHC金属錯体を用いた大きな回転部位を有する結晶性分子ローターの開発に成功した。以上の通り、全体を通して研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画は「NHC 金属錯体を用いた分子間ギア運動のエントロピー効果を固体内で制御(令和5年度予定)」を引き続き行っていく。また、新たな研究計画として「NHC 金属錯体を用いた双極子を有する回転部位の連動運動制御」を行っていく予定である。さらにこれらの研究が十分に進展した場合には「非対称な NHC 金属錯体を用いたトリプチセンの分子間ギア運動の実現(令和6年度予定)」にも着手する。
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