2023 Fiscal Year Research-status Report
NHC金属錯体を用いた固体内分子ギア運動の合理的設計と発光物性
Project/Area Number |
22KJ0116
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安藤 廉平 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Keywords | 有機結晶 / NHC金属錯体 / 固体発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
NHC金(I)錯体を用いた巨大な回転部位を有する分子ローターの合成: 固体中における回転運動について、一般的に分子骨格が大きくなるほど、結晶内での相互作用も大きくなる傾向にあるため、大きな分子骨格をローターとした結晶性分子ローターの実現自体が困難な課題となっている。本研究ではこれまで報告されていた中で最も大きいトリプチセン骨格を上回るペンチプチセン骨格の結晶中における運動を達成し、査読付き論文誌に投稿、掲載された。 NHC 銅(I)錯体を用いた分子間ギア運動の連動性変化と固体発光特性の調査: 連動部位の自由度を変化させることで、連動運動や固体発光特性がどのように変化するかを明らかにすることを目的に化合物の合成を行った。配位子としてピリジンを用いた分子結晶1及び1,2-ジ(4-ピリジル)アセチレンを用いた配位高分子結晶2を合成し、各結晶サンプルの固体NMR測定を行った。固体NMR測定およびシミュレーション解析の結果、回転部位であるピリジル基が比較的自由に動ける結晶1では低温から室温において数MHz程度の2回回転および4回回転を示すことが明らかとなった。その一方で、回転軸が固定されている結晶2では低温から室温の間での回転運動の解析が困難であった。348 K以上の高温領域で2回回転が起きていることが示唆された。いずれの運動についてもアイリングプロットの結果から、活性化エントロピー変化が負の値であり、ピリジル基同士の連動運動が示唆された。また、固体発光特性について結晶1では青色発光を示すのに対し、結晶2は黄緑色発光を示すことがわかった。興味深いことに、結晶1の発光強度は低温から室温に温度を上げるにつれてその発光強度が増大したのに対し、結晶2では発光強度の減少が確認された。このことから分子回転の変化が固体発光特性へ影響を与えていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度から取り組んでいた「NHC金(I)錯体を用いた巨大な回転部位を有する分子ローターの合成」について査読付き論文誌への掲載がされた。また、「NHC 銅(I)錯体を用いた分子間ギア運動の連動性変化と固体発光特性の調査」についても主要な測定結果を得られており、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は「NHC 銅(I)錯体を用いた分子間ギア運動の連動性変化と固体発光特性の調査」について論文投稿を進める予定である。また、新たな研究計画として「NHC 金属錯体を用いた双極子を有する回転部位の連動運動制御」を行っていく予定である。予備実験として2,2’,3,3’テトラフルオロビフェニルを用いたNHC金(I)2核錯体を合成し、1,4ジフルオロベンゼン及び1,3ジフルオロベンゼン中で再結晶を行った結果、いずれの場合もジフルオロベンゼンを包摂した結晶が得られており、いずれの結晶においても包摂溶媒のジフルオロベンゼン及びテトラフルオロビフェニルが交互に配列している結晶構造を取っていることが明らかとなった。今後は包摂溶媒の検討や、固体NMR測定を用いた分子運動の解析による連動性の違いの有無や固体発光特性の測定を行う。
|
Research Products
(4 results)