2022 Fiscal Year Annual Research Report
TNBCにおけるCSF-1R陽性Tregの機能解明とIL-34標的治療の開発
Project/Area Number |
22J21076
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
梶原 ナビール 北海道大学, 医学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | TNBC / MDSC / IL-34 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリプルネガティブ乳がん (TNBC) において、我々が着目していたインターロイキン-34 (IL-34) というサイトカインと免疫抑制細胞である骨髄由来抑制細胞 (MDSC) との間に関連を見出し、その内容についての論文を発表した。 具体的には、腫瘍由来の IL-34 が腫瘍微小環境内で単球系 MDSC (M-MDSC) の分化を促進し、多形角 MDSC (PMN-MDSC) への分化を抑制することが明らかになった。その結果、M-MDSC は制御性 T 細胞 (Treg) を誘導することによって免疫抑制性腫瘍微小環境の構築に寄与することが判明した。また、腫瘍微小環境内の PMN-MDSC の減少に伴って、血管内皮細胞も減少-腫瘍内の総血管量が減少し、それにより腫瘍内における薬剤送達効率が落ちることもわかった。 さらに、腫瘍由来 IL-34 を中和抗体によりブロックすることで、腫瘍微小環境内の免疫抑制が解除され、抗がん剤等の薬剤が抗腫瘍効果を発揮できるようになることが判明した。現在は最適な IL-34 阻害薬の作製を目指しており、その傍ら、既存薬をドラッグリポジショニングすることで IL-34 を阻害するような効果を持つものがないかを検索中である。 以上より、IL-34 を標的とした治療は、TNBC 患者の予後を改善する可能性がある。本研究開発の推進により、「TNBC 局所における IL-34 の発現診断 → IL-34 阻害薬の投与」という新しいがん治療のコンセプトが生まれる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該研究課題開始時点で、TNBC 腫瘍に浸潤している Treg のほとんどが IL-34 の受容体である CSF-1R を発現しており、CSF-1R 陽性 Treg が IL-34 欠損 TNBC 腫瘍中と比べ IL-34 産生 TNBC 腫瘍中で増加することが判明していた。これらの結果は、IL-34 が Treg に作用している可能性を示唆するものであり、IL-34 によって誘導される免疫抑制を制御する上でこれらを解き明かす必要があった。故に、本研究では TNBC における CSF-1R 陽性 Treg の機能を解明し、IL-34 標的治療の実現可能性を検証することを目的としていた。しかしながら、IL-34 は CSF-1R 陽性 Treg に直接影響せず、IL-34 が誘導する腫瘍環境中の M-MDSC が Treg を呼び寄せていたことが判明した。また、抗 IL-34 抗体を用いることで IL-34 により誘導される M-MDSC-Treg の免疫抑制軸が解除できることがわかった。これらの結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy というがん免疫の専門誌に掲載した。さらに、現在は、最適な IL-34 阻害薬の開発および IL-34 阻害能力を持つ既存薬の探索を行っている。以上から、IL-34 によって誘導される免疫抑制を制御するという最終目標には大きく近づき、当初の目標以上の成果をあげることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはヒトにおける抗 IL-34 抗体の効果を予測するために、免疫ヒト化 TNBC 患者組織由来 PDX マウスモデルを樹立する。それに向け、まず免疫ヒト化マウスを作製する。そのために、超免疫不全マウスである NSG マウスとヒト造血幹細胞を購入し、その造血幹細胞を NSG マウスに静脈注射する。静脈注射から 3~4 ヶ月ほど経つとマウスの体内でヒトの 免疫が立ち上がるため、そのマウスに TNBC 患者由来 PDX 腫瘍を移植する。免疫ヒト化マウスの作製は困難であり、当研究室でのその成功率は 50% 程度であるため、最終的に最低 9 匹のマウスを実験に使用することを目的として 18 匹の NSG マウスを購入する予定である。また、既存薬をドラッグリポジショニングすることで IL-34 を阻害するような効果を持つものがないかを検索し、見つかれば、その薬剤による IL-34 阻害能力および抗腫瘍効果を検証予定である。現在のところ、候補として抗エストロゲン薬があがっており、フルベストラント・タモキシフェン・アナストロゾール等を用いて TNBC 腫瘍マウスモデルを治療予定である。治療 2 週間後、腫瘍中の免疫細胞をフローサトメトリーや PCR で解析し、抗エストロゲン薬が腫瘍微小環境に及ぼす影響について詳細に調べていく予定である。最適な IL-34 阻害薬の開発については、海外の阻害薬作成を専門とする研究室と連携しながら進める。
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Research Products
(5 results)