2022 Fiscal Year Annual Research Report
蚊特異的フラビウイルスを利用した病原性フラビウイルスにおける宿主特異性機構の解明
Project/Area Number |
22J21842
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 広子 北海道大学, 国際感染症学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 昆虫特異的ウイルス / 宿主特異性 / フラビウイルス / 温度適応性 / ウイルス進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
蚊媒介性フラビウイルスは、日本脳炎ウイルス(JEV)やデングウイルス(DENV)等の脊椎動物にも感染性を有する病原性フラビウイルスと、蚊のみで感染が成立するとされている蚊特異的フラビウイルスに分類される。蚊特異的フラビウイルスと病原性フラビウイルスは遺伝的には近縁であるが、宿主特異性の違いに関わる機構は、ほとんど明らかとなっていない。本研究課題「蚊特異的フラビウイルスを利用した病原性フラビウイルスにおける宿主特異性機構の解明」では、脊椎動物に感染が成立する日本脳炎ウイルス(JEV)と、蚊特異的フラビウイルスであるバルケジライクウイルス(BJLV)の相同領域組換えウイルスを作出し、その性状を野生型ウイルスと比較解析することで、フラビウイルスの宿主特異性に寄与するウイルス因子を探索する。 2022年度は、構造タンパク質prM、およびEの相同領域を置換したキメラウイルスの作成に成功し、キメラウイルスの宿主特異性を評価した。その結果、BJLVの構造タンパク質prMEは、哺乳類細胞において、蚊由来培養細胞と同様に培養温度依存的に侵入過程において機能することが明らかになった。細胞培養温度がウイルスの動態に影響することが判明した為、複数の蚊特異的フラビウイルスを対象に、蚊由来培養細胞を用いて、哺乳類動物細胞の培養温度条件で増殖できる温度順化ウイルス株の取得を開始した。また、BJLVの非構造タンパク質や非翻訳領域に関して、哺乳類細胞における複製への影響を調べるために、それらの領域の組換えウイルスの作出を試みたが、CPER法でのキメラウイルスの作成は困難であった。そこで、JEVとBJLVに関して、構造タンパク質領域をルシフェラーゼ遺伝子に置換したレプリコンアッセイの構築を開始し、構造タンパク質以外の領域に関して宿主特異性を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、2022年度は、細胞への吸着、侵入に関与する構造タンパク質であるprM、Eタンパク質領域を組換えた、JEVとBJLVのキメラウイルの作出に成功した。キメラウイルスの性状解析の結果、prME領域がBJLVでその他の領域がJEVであるキメラウイルスが、細胞培養温度の変化に依存して哺乳類細胞へ感染性を有することが示された。このことから、BJLVの構造タンパク質prMEは、哺乳類細胞において、蚊由来培養細胞と同様に培養温度依存的に侵入過程において機能することが明らかになった。ウイルス非構造領域に関しても、複数の領域を標的にキメラウイルスの作出を試みたが、CPER法によるキメラウイルスの産生は認められなかった為、キメラウイルスを用いた解析に替えて、構造タンパク質領域をルシフェラーゼ遺伝子に置換したレプリコンアッセイを構築し、非構造領域の哺乳類細胞内での複製能の検証を実施している。以上の状況から、本研究課題は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在取り組んでいる、構造タンパク質領域をルシフェラーゼ遺伝子に置換したレプリコンアッセイの構築を進める。初めに、哺乳類細胞プロモーターを持つBJLV野生型レプリコンを作成し、哺乳類細胞にレプリコンを導入したときのルシフェラーゼ活性を測定することで、哺乳類細胞内でのBJLV非構造領域の複製能を調べる。複製が生じなかった場合、3’-UTR、5’-UTR、NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B、NS5の各標的領域を一つずつ欠損させたJEVレプリコンと、BJLV各標的領域を有するプラスミドを共発現させた際の、ルシフェラーゼ活性を測定する。BJLV標的領域が、欠損させたJEVの相同領域を補完しうるのかを評価することで、各BJLV非構造領域が、哺乳類細胞でウイルス複製能を保持するのかを検証し、複製能を喪失したBJLV非構造領域を同定する。同定したタンパク質に関しては、機能に関わるアミノ酸領域をより詳細に探索する。また、細胞培養温度が蚊特異的フラビウイルスの感染・増殖性に与える影響を明らかにする為に、現在作出中の、複数種の蚊特異的フラビウイルスの哺乳類細胞培養温度順化株について、温度順化で生じるウイルスゲノム変異を同定する。CPER法にて変異部位を置換したリコンビナントウイルスを作出して哺乳類細胞での増殖性を検証し、温度順化に関わるウイルス遺伝子領域を同定する。これらの結果から、哺乳動物細胞での増殖に関わるウイルス側の要因を明らかにする。
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