2022 Fiscal Year Annual Research Report
マダニに共生する真核生物群の特定と病原体排除因子の探索
Project/Area Number |
22J21938
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田谷 友里恵 北海道大学, 国際感染症学院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 吸血性節足動物 / マイクロビオーム / マダニ / 真核生物叢 / アピコンプレクサ / グレガリナ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの節足動物には、種特異的かつ致死的な真菌や原虫が感染することや、栄養素の分解・生合成を担う共生真核生物も存在することが知られている。それに対して、マダニは人や家畜に深刻な感染症を媒介するため、研究対象は必然的にそれらに集中しており、非病原性の保有真核生物に関しては少数の検出報告のみである。本研究課題では、マダニに寄生や共生をする真核微生物を明らかにすることで、マダニの防除に関する基礎的知見を構築することを目的とする。 日本産マダニのうちシュルツェマダニ、ヤマトマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニの4種について、北海道、東北、近畿、九州の計4地域で採集した。マダニ個体184サンプルについて、真核生物叢解析および細菌叢解析を実施した。真核生物叢については、真核生物18S rRNA遺伝子のV4領域を対象として、汎真核生物用ユニバーサルプライマーとマダニDNAの増幅を抑制するブロッカーPNAを用い、PCRを行った。細菌叢に関しては、細菌16S rRNA遺伝子のV3-4領域を対象としたPCRを行った。各増幅産物をIllumina MiSeqで解読し、Qiime2プラットフォームを用いて生物組成推定を行った。主な標的である真核生物叢に関しては、同解析により、由来地域よりもマダニ種によるクラスタリングが強く認められたことから、マダニ種特異的に感染する真核生物群の存在が示唆された。加えて、約15%のマダニ個体から、節足動物寄生性のアピコンプレクサ門原虫であるグレガリナ類が検出された。さらに、全てのマダニ種において未登録の配列が高い割合で検出されたことから、遺伝情報の未登録な真核生物の保有が示唆された。 オオトゲチマダニ、およびキチマダニをサンプルとして用い、直接鏡検、ショ糖浮遊法、およびオーシスト濃縮法によるグレガリナ類の検出・分離を試みた。オーシスト様の構造物を検出したものの、種同定や分離培養には至らなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内のマダニ4種について、保有する細菌叢と真核生物叢を明らかにした。細菌叢と真核生物叢の両方を統合することにより、網羅性の高いデータとなり、微生物間の相関関係を解析するための基礎情報を得た。同解析結果からさらに、病原体―非病原体の相関について解析を行っていく。また、グレガリナ類については、本研究課題に関連して初めてマダニから検出されたため、同原虫の性状解析により、マダニの防除に繋がる知見を得られることが期待できる。グレガリナ類の分離培養には至っていないものの、オーシスト様構造が検出されるなど、一部良好な結果も得られている。 以上のことから、研究は当初の予定通り、おおむね順調に進んでいると自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、おおむね順調に研究が進行できているため、本年度も申請書の計画通り実施する。 病原微生物の保有状況等による真核生物叢の違いを解析することで、媒介病原体の保有パターンと相関のある真核生物を選出する。また、選出した真核生物について分離培養を行う。グレガリナ類の他には、真菌や繊毛虫等が候補となると予想されるため、分類群に応じて既存の選択培地を用いる。分離できた真核生物は、サンガーシーケンスを用いて18S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく種推定を行うとともに、重要性の大きいものから、次世代シーケンサー等を用いてゲノムを決定する。
|
Research Products
(4 results)