2022 Fiscal Year Annual Research Report
屋久島高山帯における植物の矮小化要因の解明-ヤクシカの被食回避仮説の検証
Project/Area Number |
21J00020
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大樹 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 動物と植物の相互作用 / 屋久島 / 矮小進化 / 元素分析 / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は屋久島の矮小植物群の植物体サイズに個体の栄養状況が影響しているかの検証を行った。屋久島高山帯に分布する分類群と近隣地域の対照分類群の26分類群ペア計236個体を用いて、マクロスケールや局所スケールで土壌栄養分と相関があるとされる葉内窒素濃度の測定を行った。その結果14分類群では屋久島分類群のほうが平均値は低かったものの、残りの12分類群では対照分類群のほうが平均値が低かった。形態データより算出した分類群ごとの矮小化度合い、シカの嗜好性、葉内窒素濃度、さらに分岐年代や気候変数などを用いた多変量解析からも葉内窒素濃度の影響は検出されず、シカの嗜好性のみが屋久島の植物の矮小化に強く影響していることが示された。したがって屋久島の植物の矮小化は従来考えられていた土壌栄養分の欠如や日射量の不足などによって引き起こされたのではなく、ヤクシカによる採食回避のために引き起こされたことが明らかになった。また矮小進化をもたらした遺伝基盤の解明のため、アキノキリンソウの矮小型12個体と普通型12個体の全ゲノムリーシーケンスを行い、ゲノム比較から候補遺伝子の探索を行った。生態型間で大きく分化しているゲノム領域を特定し、またセレクションスキャン解析より自然選択が働いたと考えられる領域を抽出した。その結果、40の候補領域が検出され、候補領域上には39の遺伝子が座していた。これらの遺伝子の中には植物体サイズに影響すると考えられる植物ホルモンや細胞分裂に関わる遺伝子も検出された。さらにこれら遺伝子の配列上には矮小型にのみみられた派生型の非同義置換も多数検出された。したがってこれらの候補遺伝子がアキノキリンソウにおける矮小進化に関連している可能性があると考えられる。次年度は候補遺伝子の更なる絞り込みや得られた研究成果を国際誌や国際学会にて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた葉内窒素濃度の測定を終えることができ、更に多変量解析より屋久島の矮小植物群の進化要因を明らかにすることができた。また全ゲノム配列を用いた解析よりアキノキリンソウの矮小型における候補遺伝子座の絞り込みも行うことができた。一方でQTL解析のための交配実験が予定通り進んでおらず、まだ十分な数の個体の確保ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
イッスンキンカとアキノキリンソウの交配実験によってQTL解析用の株の確保を行う。また得られた成果を国際論文や国際学会にて発表する。
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Research Products
(2 results)