2022 Fiscal Year Annual Research Report
気孔開閉の分子機構をモデルとした受粉反応時の花粉吸水における膨圧調節機構の解明
Project/Area Number |
21J00251
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 真妃 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 花粉吸水 / イオン輸送 / アブラナ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
受粉時、花粉は雌しべ柱頭に存在する乳頭細胞から水を受け取り吸水する。花粉吸水は花粉管発芽と伸長に必須であるため、植物が受精を達成し、次世代を残すために重要である。乳頭細胞上に付着した花粉は種間不和合性や種内不和合性により、受精可能な花粉が選択されたのち吸水させる。吸水可能な花粉を乳頭細胞が認識する自他認識機構から、その下流で花粉吸水を誘導する乳頭細胞内のシグナル伝達は理解されつつあるが、未だどのように乳頭細胞内の水が花粉へと移行するのか、吸水がされない花粉ではどのように水の移行が止まるのか、といったシグナル伝達末端の理解は進んでいない。申請者は、植物細胞の膨圧制御が花粉吸水に関与すると仮説を立て、膨圧制御に重要なイオン輸送体が花粉吸水時に機能しているかを調べている。前年度に乳頭細胞で高発現するイオン輸送体をシロイヌナズナの発現データベースより選抜し、今年度ではその遺伝子破壊株の表現型解析から、種子形成が野生株と比較して低下する株を見出した。また、イオン輸送体開口、閉鎖化合物ライブラリーを用いて、自家不和合性を示すアブラナ(Brassica rapa)の雌しべ内への花粉管侵入の様子が変化する化合物スクリーニングを行った。現在ライブラリー70種の化合物の中から自家不和合性に変化を与える化合物を数点選抜した。シロイヌナズナのイオン輸送体候補の変異株の種子形成の変化が乳頭細胞側の花粉吸水に対する影響かを調べると共に、アブラナの自家不和合性に影響を与える化合物の標的探索を行うことで、アブラナ科の花粉吸水に機能する乳頭細胞のイオン輸送体を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度作製したシロイヌナズナの候補輸送体の変異株を用いて表現型解析を行い、種子形成に影響がみられた株を選抜することができた。また、アブラナを用いた自家不和合性に影響を与える化合物スクリーニングを確立し、実際に不和合性に変化がみられる化合物を見つけた。化合物スクリーニングに関しては、再現性確認中ではあるが、現時点で1種の化合物では確実な効果がみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はシロイヌナズナの輸送体欠損株の雌しべを用いた野生株花粉受粉実験や、花粉のin vitro花粉管発芽伸長実験を行うことで、種子形成が雌側の影響で低下しているかを調べる。また、欠損株の受粉過程において、花粉吸水反応に変化がみられ種子形成が低下するかを花粉吸水測定によって検証する。アブラナを用いた化合物スクリーニングでは、最終的に選抜された化合物の動物での標的から、植物で標的となる可能性が高いイオン輸送体を探索し、その変異株を入手、作製し花粉吸水を測定する。以上の実験を踏まえて、アブラナ科植物の花粉吸水に重要な雌しべ乳頭細胞のイオン輸送体を同定し、その結果をまとめて、学術論文への投稿を行う。
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