2021 Fiscal Year Annual Research Report
大型液体シンチレータ検出器での0ν2β発見に向けた発光性ミニバルーンの研究開発
Project/Area Number |
21J20758
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 陸生 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 二重ベータ崩壊 / 液体シンチレータ / シンチレーションフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
KamLAND-Zen800実験では、大型液体シンチレータ検出器を用いて世界最高感度でのニュートリノレス二重ベータ崩壊探索を行っている。本研究の目的は、ハードウェア・ソフトウェア双方の観点から更なる探索感度の向上を実現させることで、ニュートリノのマヨラナ性(粒子・反粒子が同一の性質)の検証を行うことである。本研究では、次期実験であるKamLAND2-Zenでの導入を目指している発光性ミニバルーンの研究開発、そして宇宙線ミューオン由来の背景事象の削減を目指した解析手法の開発を行っている。 発光性ミニバルーン素材の発光性能を詳細に測定し、その情報を用いてKamLAND2-Zenを模した光学シミュレーションを構築することで、想定されるミニバルーン由来の背景事象を検証した。そして、発光性ミニバルーン素材と液体シンチレータの発光波形情報を使用した新たな波形弁別手法を開発した。これらにより、KamLAND2-Zenにおける発光性ミニバルーンの有効性をシミュレーションにより評価し、問題となる212Bi-Poバックグラウンドが86.2%低減できることを示した。 また、宇宙線ミューオンの解析手法を一新することで、現在では正しく事象再構成を行うことが困難であった複数ミューオンイベントやストッピングミューオンイベントを判別する研究を行っている。これにより、既存の解析では単一ミューオンだと判定されていた事象の中に、複数ミューオンイベントの可能性が高いものが紛れていることを発見した。宇宙線ミューオンイベントのより正確な事象再構成が可能となることで、ミューオンに起因した原子核破砕物の崩壊による背景事象除去の効率向上が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KamLAND2-Zenにおける発光性ミニバルーンの有効性は、光学シミュレーションの構築と解析手法の開発により、シミュレーションベースでの検証を行うことができている。 また、宇宙線ミューオンイベントに関する解析ツールは基本的な部分の開発は済んでいる。今後のミューオン解析の改良や、複数ミューオン判定後の背景事象除去法の確立などが必要ではあるが、総合的におおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
発光性ミニバルーン素材の、特に放射線不純物含有量のより詳細な評価を行う。また、宇宙線ミューオンイベントの解析手法の改良を行う。特に複数ミューオンイベントの他にもストッピングミューオンイベントに注目した解析を開発する。そして、これらのミューオンに起因する原子核破砕物の崩壊イベントの除去手法の開発も進めていく。
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