2022 Fiscal Year Annual Research Report
大型液体シンチレータ検出器での0ν2β発見に向けた発光性ミニバルーンの研究開発
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21J20758
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 陸生 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 二重ベータ崩壊 / ニュートリノ / 素粒子実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
KamLAND-Zen実験では、大型液体シンチレータ検出器を用いて世界最高感度でのニュートリノレス二重ベータ崩壊探索を行っている。本研究の目的は、新たな解析手法の開発により更なる探索感度の向上を実現させることで、ニュートリノのマヨラナ性の検証を行うことである。本研究では、特に宇宙線ミューオン由来の背景事象の削減を目指す解析手法の開発を行っている。また、次期実験であるKamLAND2-Zen実験を見据えた、プロトタイプ検出器での発光性ミニバルーン素材の試験も構想している。 本年度での研究では、現状では正確な事象再構成が困難である複数ミューオンイベントの新たな解析手法の開発を行った。KamLANDの光学シミュレーションにおいて複数ミューオン飛跡の再構成性能を検証し、既存の手法では再構成された飛跡方向の精度が5度以内であるものは20%程度だったのに対し、本研究で開発した手法では80%にまで向上することを確認した。また、単一ミューオンイベントに対しても新手法を適用させることで、飛跡方向の精度が84%だったものが新手法により92%まで向上することも確認できた。実際のKamLANDデータにこのツールを適用することによって複数ミューオンイベントの可能性が高いものを発見しており、新手法を使用することでミューオンイベント再構成の精度向上が期待される。今後さらに解析を進めることでミューオン由来背景事象の除去性能への効果を評価し、探索感度の向上を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宇宙線由来のミューオンが液体シンチレータ中の原子核を破砕し、それによって生じた不安定核種はKamLAND-Zen実験の主要なバックグラウンドの一つとなっている。本研究では、この宇宙線ミューオンの新たな飛跡再構成手法の開発を行っている。 現状の解析では、その核破砕生成物とミューオン飛跡に相関があることに着目した方法でバックグラウンドの低減を行っている。また、宇宙線由来のミューオンの内5~10%は2本以上のミューオンが同時に入射する複数ミューオンイベントだということが分かっている。しかし、現在の飛跡再構成手法は単一ミューオンに最適化されたものとなっており、複数ミューオンイベントに対しては正確な取り扱いができていないことが問題となっている。そこで、複数ミューオンを正確に再構成することのできる新しい手法の開発を行った。その結果KamLANDフルシミュレーションでの複数ミューオンイベントにおいて、現行の手法ではミューオン飛来方向の再構成精度が5度以内だったものが20%だったのに対し、新手法では80%まで向上したことを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
シミュレーションベースで開発していた新手法をさらにチューニングしたのちに、実際のKamLAND-Zenデータに適用させることで、複数ミューオンイベントの正確な取り扱いを行う。そして、飛跡再構成精度の改善によりミューオン核破砕生成物バックグラウンドの除去効率の向上を目指し開発を進める。
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