2023 Fiscal Year Annual Research Report
大型液体シンチレータ検出器での0ν2β発見に向けた発光性ミニバルーンの研究開発
Project/Area Number |
22KJ0178
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 陸生 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 二重ベータ崩壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
KamLAND-Zen実験では、極低バックグラウンド環境の大型液体シンチレータ検出器を用いて、136Xeのニュートリノレス二重ベータ崩壊探索を行っている。この事象は未だ発見されておらず、更なる探索感度の向上が求められる。本研究では、宇宙線ミューオン由来の背景事象を削減するための新たな解析手法の開発を行った。 現行のツールでは再構成が困難な複数ミューオンイベントを解析するための新しいツールをシミュレーションベースで開発しており、本年度の研究ではこのツールをKamLANDで観測されたデータに適用し、その再構成性能を検証した。ミューオン飛跡との位置相関がある12B事象と飛跡間の距離dLによる評価を行い、dL<2mと判定された割合が再構成ミューオン数が単一・複数の場合でそれぞれ90.6%・89.2%であり、現行のツール(87.0%・78.9%)と比較して精度が向上した。単一ミューオン判定のイベントでは2つのツール間の差は小さいが、複数ミューオン判定のイベントでは10%以上向上した。これにより、新しく開発したツールが複数ミューオンイベントを適切に判定し、その飛跡を精度良く再構成できることが確認された。 これまでの研究により、適切な取り扱いができていなかった複数ミューオンイベントについて、精度よく再構成できるツールの開発に成功し、実データに適用することで複数ミューオンイベントの判定が可能となった。また、通常の単一ミューオンイベントでも再構成精度の向上が確認された。今後はさらに解析を進め、ミューオン由来の背景事象の除去性能への効果を評価する。特に、ミューオン飛跡情報を用いた機械学習による解析手法の開発も並行して行っており、新たな飛跡再構成ツールとともに実装することで宇宙線ミューオン由来の背景事象を削減し、探索感度の向上を目指す。
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